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村全体に活性化へやる気を起こさせるなど、矢筈トンネルの“トンネル効果”は絶大で、秘境の村にとって歴史的とも言える事件となった。人口は、現在の881人から1,000人台回復が村の目標になっている。いわゆる“嫁”不足問題にも、ぼつぼつではあるが好影響のきざしが見えてきたという。トンネル開通は住民のやる気を刺激し、各集落に活性化委員会が出来て、行政だけに頼らず自主的に、という動きも出ているという。

 

4 観光―“南アルプスー番地”

農林業の衰退に伴う村勢の活性化へ向けて、上村は「観光」に活路を求めている。“南アルプスー番地”をキャッチフレーズにして、自然と歴史を生かした観光戦略を展開している。それを可能にしたのは、矢筈トンネルである。

上村の観光メニューの主役は、すばらしいアルプスの山岳展望である。村内には標高約2,000mの「しらびそ高原」があり、東方の眼前に広がる3,000m級の南アルプスのパノラマ展望は圧倒的にすばらしい。振り向くと、西方には中央アルプス連峰の眺望が広がり、遠い北アルプスの一角も視野に入ってくる。南、中央、北の三アルプスの展望台である。この展望台高原に町営の宿泊施設をつくり、キャンプ場、スポーツ施設なども整備した。最近は利用者も多くなっている。マラソン選手の高地訓練にも利用され、話題性も出てきた。

また、日本の山村の原風景の面影をとどめる「下栗」集落を“日本のチロル”として売り出し中だ。歴史的民俗文化“霜月祭”も観光資源として期待されている。

 

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<霜月祭>

遠く戦国時代にさかのぼる地方豪族の遠山氏に出来する神事神楽。毎年12月〜1月上旬にかけ、村内4地区で日をずらして行われる湯立神楽。社殿の中央にかまどを築き、湯をたぎらせ、神々に湯を捧げる神事が夜を徹して行われる。重要無形民俗文化財。

 

 

 

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