ステムが主流になり、そのサウンドは平均的にまとまりが良いが音場の制御という面では、各帯域ごとの調整が限られているので、あまり自由度は高くない。なお、代表的な1ボックスシステムとしてイギリスのターボサウンドTMSシリーズがあげられる。
しかし、この1ボックスタイプにはまだ問題があった。それは、特に広いカバーエリアを得るために横並びにスピーカーを設置したさいに起こる各スピーカー間の干渉である。これを混変調といい、特に水平方向にそのスピーカーの指向性が交わると、各帯域間で位相が一致したりずれたりすることで起こり、結果音が濁ることになる。
そこでまた新しいエンクロージャーの形状が考案された。それがヴァーチャルアレイという考え方によって生まれたもので、真上から見ると台形型をしていて、トレピゾイド型エンクロージャーと呼ばれる。これは、水平指向性を狭くすることで横並びに設置したさいに起こる位相干渉の問題を低減させ、また音を遠くまで飛ばす事にもつながった。よって現在の大型システムにも多く取り入れられている。代表的なものには、当館で使用しているレンカスハインツのSR2Aや、メイヤーサウンドのMSLシリーズ、アポジー社のAEシリーズなどがある。また、このころからスピーカーシステムに大きな変革が訪れる。それは従来のシステムがパッシヴタイプ(電気回路を必要としない)であったのに対して、これら新しいタイプのものはアクテイブタイブを多く取り入れられていたのである。1ボックスタイプではエンクロージャー内で各帯域用のユニット間の振動板の位置が、取り付け位置によっては大きくずれる事が起こり、そのままでは位相がずれが起こることになる。それをアンプ側で各帯域の出力にディレイを通して位相をあわせられるようにそのシステム専用のプロセッサーを使うことで解決しているのである。このプロセッサーは位相干渉の問題ばかりでなく、常にアンプやスピーカーユニットの動作を監視することで機器を保護したり、そのシステムの音響特性を補正などをする機能がある。
現在では、PA機器のデジタル化が進み、近い将来、大きなミキサーや多くの周辺機器を使用しなくても小さなコントローラーとユニットとを光ケーブルでつなぐだけで、今までの仕事が可能になるシステムが完成しつつある。
スピーカー等の設置にあたっての安全管理について
音響機器の発展に伴い、システムが大型化し、野外でのコンサートにもなってくると、膨大な数のスピーカーを何本も積み重ねるようなことがある。特にスピーカーシステムは、観客のすぐ近くにあることが多く、このため、各種催事における安全面の配慮は充分検討されるべきである。スピーカーのスタッキングに関しては最も注意を払うべきで、現在、よく使われるスピーカーシステムは、だいたい2種類以上の形状の事なるエンクロージャーを積み重ねることになるので、その固定方法も様々である。また、スピーカーの表面処理も大体にして2種類あり、1つはFRP仕上げなどの塗装仕上げのもの、もう1つはパンチカーペット仕上げのものである。この中でも特に塗装仕上げのものは、スピーカー同士が互いに滑りやすくラッシングベルトで締めあげていくだけでもずれる場合があり、このためゴムシートなど滑り止めになるようなものを用意して、各スピーカーの間にはさみ込むなどの配慮をするべきであろう。また、締めあげに利用されるラッシングベルトは、できるだけ太い幅で締めあげ機のついたもの(幅50以上、使用荷重1t、破断荷重2t以上)を使用することが望ましい。また仮設音響では、多くのケーブルをステージとミキサー卓の間に引き回すことになるが、その際、観客の安全をはかるためケーブル養生が必要となる。そのケーブル養生用のカバーが各種ありますが、音響用のものは高価なので、工事用のものを流用すればよいだろう。その他にステージ袖にセットされるパワーアンプは、かなり高温の熱を放出するため様々なトラブルを起こしやすいので、特に真夏の野外イベントなどでは注意したい。
音場補正の実際
ここではスペクトラム、アナライザーSA3052を使用して音場補正の一例を紹介する。まずモニタースピーカーYAMAHA S-2112からピンクノイズを出力し、前もってスペアナを使いその特性をグラフイックイコライザーを使用してフラットな状態にしておく。そうしておいて、ピンクノイズを