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3. 3つの特色のあった野外劇

今までの話は劇場公演の話だったのですが、ここで野外劇の話をしておきたいと思います。

わたしは、岐阜で信長の芝居を各年でやっています。今年で3回目になりますが、場所は最初は金華山でやりましたが、前回から国際会議場の階段を客席にして長良川の河川敷に舞台を作ってやろうということです。古代ローマのギリシャ劇の古代劇場を想像してもらえばいいんじゃないかと思います。

階段の下に庭があるわけなんですが、そこには竜安寺のような石があるわけなんです。石のうえに舞台を張って舞台になかに石を埋めてしまって、一部石組みのところは城の庭と言うことにしてシンプルな岐阜の城を建てたのです。そしてその後ろに、長良川の後ろに本物の岐阜城があるわけなんです。岐阜城を借景にして作りました。それをやるのに大変だったんです。まず、安藤さんの創造物に制限がある、河川敷は公演局の許可がいる、河川敷の中に道路が走っていまして芝居の途中で車が走るといけないので交通を遮断するとなると県の交通局の範囲だとか。おまけに戦争のシーンに火を焚きたいというと絶対に火はだめだ、前例がないからと言うことで前例のある薪能の篝火と花火でそのシーンを上演ました。とにかく大変でした。日本では、他に五稜郭などの野外劇があるようですけれど外国では非常に盛んで、お手元にわたしが見て来たもののうち3つだけをお示ししていますが、一番上にあるのはウイリアムテルです。非常に写実的な映画のオープンセットさながらのデザインなんです。その下にあるアンデルセンの記念館でやってるアンデルセン物語りの話は童話的なメルヘンチックなものなんです。これはディズニーランドの小型見たいなものを想像していただいたらいいのではないかと思います。もう一つは抽象的なハムレットなんです。これは現代舞踊として現代音楽でやるわけです。舞踊劇です。これは非常に抽象的な非写実的な装置なんです。

この3つの野外劇なんですけれど、自然主義写実・リアリズムと下の2つは反自写実と言おうか、片一方はディズニー的メルヘン的なアンデルセンの童話の世界、一つは現代舞踊の抽象化した舞台、抽象化した舞台ですけれどもその後ろのコロンボ城は本物であり借景として使っているわけです。実際に上演される部分は抽象的なものなのです。この3つが非常に対照的なのでここに上げさせてもらいました。

まず、ウイリアムテルですけれど、これはそこにコメントも入れさせてもらいましたのでお読みいいただけたらと思いますが、この芝居は十数年間行われています。シラーの原作で、スイスの建国に導いた記念すべき物語というのが中身なんです。インターラーゲンで行われているもので最初は劇場でやっていたのですが劇場では限界があるということで野外でやろうということになり毎年5月から10月の水曜日と土曜日に毎晩やっているわけです。照明も音響も入れてやっています。実際に悪代宮の城を燃やす炎も花火的なもので出します。実際の丘のスロープを使った野外劇なんです。映画のセットそのもののように思ってもらえたらいいんです。劇の一番クライマックスのところでリンゴを射抜くという場面がありますが、映画ではトリックを使います。リンゴが射抜かれる場面はあらかじめ矢をリンゴに刺しておいて、「てぐす」で引っ張って撮影しそれを逆回しで使う。だから飛んで来て射抜くという形になるのです。トリックがあるから一つのフレームの中で射る方と射抜かれる方を同一画面でやれるわけなんです。そのほうが迫力があるわけです。だから非常に近いわけなんです。近くなくても近いような構図にするわけです。それなりにトリックを使って射抜く迫力があるです。

舞台はそうは行きません。近ければまともに当たるということで緊迫感がないわけです実際少し間違えると全くあたらないか、リンゴに当たらずに娘を射抜いてしまうという悲壮な場面があるわけです。だから野外劇の効果を考えて端から端に2人を対比させるわけです。下手に娘を立たせ、上手にウイリアムテルがいて、後ろに代官とか手下とかがいるわけです。そして実際に矢を放ちます。実際には娘はこの矢が通る所から5mも6mも前にいるわけなんです。広い広い野外劇場では舞台と客席の距離は相当あるので客席からは同一線上にあるように見えるわけです。それは演技なのです。娘はテルの弓を見ないわけです。実際の演技として間合いを見ているのです。それは観客

 

 

 

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