2枚の紗幕を使って木の葉の情景と林立したビルのニューヨークのビルの谷間の中に一軒の木造の家が押さえらえれるようにあると言うふうなものが非常に象徴的な中にですけれど植え付けられたデザインがありました。舞台美術のすごさに驚かされたものです。
昨年の暮れに岩出さんと「ロミオとジュリエット」やったわけですが、そのときは最低限の物を置いて暗示して行くと言う方法をやったわけです。劇場の大きさや、費用のことも考えながら簡略化をしながら観客に想像力を与える一つのきっかけを作るものだけは残さなければいけないということで苦労しています。
2. 姫路オペラ(1996年)姫路市民劇場(1998年)の美術から
次に、トータル美術ということについてお話ししたいと思います。3年前に姫路でやった「お夏清十郎」と言う芝居なんですが、舞台装置は非常に簡略化しています。回り舞台はないけれど、回しを使うことによってお夏の狂乱を表現しました。これが舞台デザインです。企画の段階から参加させてもらいました。オペラが良いということで曲も本も作るということで、アメリカ人が演出をしたのですが、音響も照明も舞台もスタッフは全部スタートの時点から参加させるという考えでした。わたしはその時点からアートディレクターとして参加しました。
まず最初に、宣伝美術としてポスターを作成するところから始めました。途中まで出来た曲のイメージに合わせてイラストを描いてもらいました。2つ描いていただきました。題字へのこだわりもありました。古典的なイメージではだめ、人形浄瑠璃のようなものでもだめと言うことでひらがなの「おなつせいじゅうろう」と言うことになりました。もう一つポスターにはキャッチコピーが必要だということでコピーライターにお願いして作ってもらいました。3つのコピーができましたがすべてを採用することになりました。
近松の原作では「お夏清十郎」処刑されるときは秋なのですが、この公演の日は4月ということなのでその時期にポスターが張られるということを予測して、ポスター効果を考えて春のイメージでやると言うことになり、桜のは花びらが散っているようにしたわけです。桜の花びらが散るというのはイラストレータが死と言うことを意識したことによっていますけれど、それと処刑的な炎、これは恋の炎でもあるわけですけれど、桜の花びらと恋の炎、また、処刑の炎を絡み合わせたポスターなんです。若いお夏が狂乱して行く狂乱っぽいイラスト、そこに持ってきて清十部との対比、そう言ったものでドラマの中身を表現してもらいました。また、チラシ持つくりました。チラシは手もとで見ますから手もとで見る効果を持ったもの、ポスターは離れてみますから離れて見る効果が必要なんです。離れて見てそれが迫力があれば前で見る。そしてチラシを手もとに持っていってもらう。また、チラシだけがプレイガイドにおかれたときに手元で読める効果がなければなりません。もう一つは、前売りの切符を封筒に入れて送るときはプレイガイドに置くような、あまりどぎつい色でなくても良いのではないか、だから少し上品な、イラストレーターが作ったままのものに色をつけたようなものにする。これをいろんなところに送りました。
今年も茂山千之丞さんの演出で、千姫の物語をやります。舞台イメージとしては、「姫路城に徳川の4人の姫様が競う花の命、女の愛とあでやかに深い彩りの舞台」と言うふうなことを作家は出してきました。それと「姫路城の長い廊下に響く鼓の音は城の命ですか女の命ですか」と言う宣伝材料を出してきました。それをポスターの中にどう入れて行くかというのが課題です。イラストレーターは徳川4人の姫様ということで千姫を中心に作家がイメージするそれぞれの姫様の性格を花にたとえたものをデザイン化しました。文字は書家に書いてもらうことにしました。舞台装置も中までまだできてはいませんが外側はプロセニアムアーチの外に姫路城の入り口を作ってここから中は姫路城だと言うことにしてこの中は非冗費象徴的な舞台を作って行くと言う簡略象徴舞台を作ります。茂山千之丞さんは「お夏清十郎」のときよりももっと抽象的、象徴的なものでやれと言う要望もあります。ポスターもまだまだこれからですけれど、4月から使用されますので完成したものを見ていただければと思います。