日本財団 図書館


というのは多目的劇場という種類なんだと僕は考えているんです。何にもできないけれど何でもできるそういう小屋が多目的の小屋である。そういうふうに理解しないと育って行かないと思うんです。これは行政の問題でもありますし、特に公立の場合には税金で建てているわけですから、みんなに適当に効果があるように建てなければならないわけで、これが現状です。

そういう考え方をしても日本においては多目的と言うのは種類としてそういう劇場であると考えて利用する方がよいと思います。これはなくならないと思います。

日本は島国ですから海外の文化に非常に興味があるわけで冷静に考えていただいたら良いと思いますがほとんどがまねをしているわけです。日本の独自の横長の小屋ではオペラはとてもじゃないができません。日本のオペラならできると思いますが、西洋のオペラはできません。西洋のオペラは縦長の形ですのでできません。フェステイバルホールでワグナーのオペラをやったときは、舞台の機構を全部はずし空っぽにしてプロセニアムの後ろにイントレを組んで照明器具はドイツの器具を並べてその光で明かりを創っていったんです。ホールの器具で使ったのはシーリングとフロント、ローホリぐらいでした。

外国の小屋は皆さんの位置から視覚に入るものは全部無くなります。全部空間になりますから全部が劇場空間になります。そういうふうな形で日本が外国の者を輸入して、みなさんにお見せすると言うふうなことは日本の劇場ではできないんです。

そう言った形で機構というのは、劇場に合わせた形でできあがって行くものなんです。後はお金の問題だけです。サスバトンを2本にしよう3本にしようというのはお金の問題なんです。

そういたものを考えるときに照明というのは大は小を兼ねると言うことを頭においてほしいのです。私がコンサルをするときは器具についてはあまり考えません。回路、回線をいかに多くするかということです。第二国立劇場、琵琶湖ホールなどは1000回路やそれを越える回路にしているものもあります。昔は150回路や200回路とかですごいと思っていましたが。と言うのは、回路は後の工事で追加できないところがあるんです。だけど器具は後からでも買えます。頭から回路を増やす、ユニットを増やすとかそう言った考え方でやります。設備、機構は多くあればあるほど良いです。

劇場については、例えばニューヨークなどでは劇場の建物だけを貸します。中身は何にも無い。あるのは客電と2・3の器具だけです。無効の感覚は日本と随分違っていて、小屋だけを借りて後は全部作るんです。その代わり照明プランナーは電気、建築からもちろん色彩もやります。たまたま既製品があれば使うでしようが、その催し物にあった形の調光器まで作ります。電気容量とかを全部図面に書いて仕込み図を作ります。

むこうのモダンダンスをやったことがあるのですが、打ち合わせに行ってステージのスタンドの鉄板の厚さや、もちろん高さやベースの大きさとかまで指定されています。それで打ち合わせが終わりますとこれで契約が終わったということになるわけです。むこうのチーフ、責任者が一人でくるのですが彼はすべてを支配します。道具から幕の上げさげからセンターのピンから照明のきっかけから全部出します。この人はプランニングを全部もって来ているわけです。むこうのプランニングというのは著作権があってさわれないんです。変更はきかないわけです。このように日本と違うんですね。それをそのまんま日本にもって来ていろいろなことをやるというのは無理なんです。ですから日本の多目的というのを守るのなら守って行った方がいいと思います。外国のほうへも発信すればいいと思います。何もできないということはないと思います。

と言うことで、劇場の機構というのは照明の場合はほとんど決まっています。ボーダーがあって、フロントサイドがあって、アッパーがあって、ローホリがあってと言う形。このようなものはおそらくなくならないと思います。フロントサイドについては、特に日本の方が優秀です。むこうの劇場いわゆる古典豊かな劇場にはシーリングもフロントも何にもありません。フロントのあるところは貴族がくるボックスいわゆる一等席なっているためですが、最近はその横にフロントサイドをガス管のようなものを利用して作っています。あれは日本の影響じゃないかと思います。そういうふうにして特に基本的には何間おきに何いうきまりはありますが、いい意味で日本

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION