ですね、いっまでもそこの会館に縛りつけるという訳では無いと、また、新しい人と交替させるから、その時はツアーに参加するなりして、そして、照明の仕事らしい事ができるように出来るのではないかと、というような事で、そういう解決方法しか見い出せれ無かったんですが。ですから、それとですね、もう一つ出てきたのはですね、実はここにもいらっしゃるかもしれませんが、所謂、財団の職員として入られて、そしてプロパーとして財団に就職されたと、そうしますと、これはですね、まあいうならば、ずっとそこへ定年になる迄そこに居らないといけない、そりゃあ黙っていても給料上がっていきますし、まあ、役職が付いたりなんかしますけれど、しかし、それが堪えられないと。それじゃあ、最初からそんな所、そんな所といったら失礼ですけれど、財団、自分はプロパーとして入ったんじゃないんか?と言いますと。いや、兎に角舞台の仕事が出来るというんで入ったんだと。所が、管理業務だと。一切その、芸術的なものには参加させて貰えない、と。これは当り前の事なんですね。で、所が、私はそこで言ってたんですが。例えば、全く、あなたは、例えば調光卓なり、スポットなりを触る事がないんですか?と。例えば講演会とか、簡単な演奏会、所謂、我々の言うシロパーという生の明かりで。で、そういったものならやらせて貰えるという訳ですね、それでも良いじゃないですかと、取り敢えず、そういったものでも、しっかりやらないと、いけませんよと、あなたはどういうやり方をしているんですか?と言うと、取り敢えず、サスを吊ってですね、そしてシーリングを点けて、フロントサイドは眩しいと言われるからフロントサイドは点けないと、シーリングとサスだけでいくと。で、私はそこでもう少しつっこんで、それではピアノの発表会というか、ピアノコンチェルトもありますし、ピアノの入った弦楽合奏などもありますし、その時に、ピアノはどのようにあつかっていますかと?そうしますと、いや別に同じようにしていますと言うんですね。で、例えば、ピアノの黒鍵の影というものを見にいった事がありますか?と。いや、そんなん見てません、と言う訳です。私は生の明かりでも、そのピアノの黒鍵の影が出来るという事は、これはピアニストにとって弾きにくい事だそうです。それから皆さん方も経験あると思いますけれど、ピアノの蓋というのは曲がっていますね、ですから、いくら黒鍵をですね、影を消してやろうとしても蓋の影が出来ると、いうような事もあります。だからそういう事をですね、ちゃんと解決するような照明の、つまり生の明かりだからと、それから音楽会だからと、ピアノ発表会だからというような事で、いい加減にしとかないで、そういう事も考えて、照明をやったらどうですかと。そうすると、ただ単に管理をしているだけでは面白くないというのが、少しは面白くなるんじゃないかと、いうふうに言った訳です。
で、これはひとつ、皆さん方もまあ、もしそういう事があれば、聞いとって貰えばいいんですが、ピアニスト、子供さんのピアノ発表会なんかは、これはもう別にそんな事気にしてやらなくてもいいんですが、いいんですけれど、しかし、まあ、少なくても例えば、ある程度プロの前の人達の、つまり音楽大学を出てですね、これからプロになろうかという人達のグループの発表会が時々あります。そういう時はですね、やはり少なくても、まずピアノの黒鍵の影は出さないようなサス、つまりサスペンションですね、サスペンションの吊り方といものを考えてあげてほしい。で、それと蓋の影ですね、これは少しずらせばですね、つまりトップから吊りますと蓋の影が出ます、黒鍵の影は出ないけれど、蓋の影は出ます。ですから、少しずらせてやって、まあ極端な話ピアニストの後からピアノを照らすと、ピアノの鍵盤を照らすというような事。それから、一台でなく何台も、少なくても二台、三台吊ってあげてお互いに影を消しあうような吊り方をしてあげると。まあ、そういった心使いですね。で、あの、これが非常に大事な事で、そういう事がただ簡単な管理業務をやっている若い人達の不満の一つに、そういうふうな事を考える事も一つの不満解消といいますか、つまり自分が勉強してきた照明に対する一つの不満の解消出来る一つの仕事ではないかと、というふうな話をしてた訳です。で、成程という事ですね。
それから、例えば、会館お任せでですね、例えば日本舞踊というようなものがあると。これは、やはり、ちゃんと、そういう時こそ自分の技術が発揮出来るのでないかと。ところがですね、もう兎に角、明かるかったら結構ですと言われると。で、稽古も見てもらわなくても結構ですと、もう兎に角、音頭で緞帳が開いて明るかって、曲の終わりで緞帳が閉まれば結構ですと、いうような、