いますと、コンサートの例で言いますと、11年前に、赤坂のサントリーホールが出来る前は、東京の上野の文化会館、よくご存じだと思いますが、ここが、オーケストラの主たるコンサート会場として、もう20何年、30年ちかく、不動の地位をしめていた訳ですね。ほとんどの東京のオーケストラが、ここで、定期演奏会をやっていたんですが、実は、10年前に、サントリーホールがオープンして、それから、段々、オーケストラの主力会場がこちらに移るようになってきたんですけれど。
実は、サントリーホールがオープンした時は、ステージの上の演奏がやりにくい、という声が、相当沢山ございました。まあ、多分、お聞きになっていると思うんですが、特に、東京のオーケストラから、不平不満が一杯出てきました。ところが、ちょっと面白いのは、東京のオーケストラから不平が出てくる割りには、海外のオーケストラからは、それほど不平、不満が言われなくて、いいんじゃないの、と言うレスポンスなんで。そういう、これは、何が違うかというと、実は、上野の文化会館とサントリーホールでは、この二つの図を比べていただければ、分かるんですが、ちょっと見にくくて御免なさい。
これ断面なんですけれど、実は、ステージの上の天井の高さが、全然違います。で、上野の文化会館は従来の多目的ホールのように、大体10m前後位の天井の高さなんです。サントリーホールは、いきなり17.8m位、ポンと上がってしまいました。これは、ヨーロッパなどのホールでは、ごく普通の形なんですけれど、実は、東京、大阪のシンフォニーホールもそうなんですけれど、そういった意味では、天井の高いホールというのは、ステージにとっては驚きだったんです。それで、先程言いました海外からのオーケストラはそうでないんですけれど、東京のオーケストラはどうも、やりにくくてしようがない。
で、やりにくくてしようがない演奏を聴きますと、とってもきたない音がします。もう、アンサンブルやりにくい訳ですから。で、そのきたないアンサンブルがですね、段々、きれいになってきたのは、確か11年前にオープンして数年たってからでした。5,6年位たってから、段々、きれいになってきた。
で、演奏家に、聞いてみると、ウン、大体、ここではこういう音がするのか、というのが分かってきた、で、分かってきたら、どうってことない。お互い、聞えるようになってきた。お互い聞えるようになってくると、アンサンブルもきれいになってくる。それで、面白いのは、上野の文化会館知っている楽員さんに、サントリーホールを聞きますと、ウン、サントリーホール、大体、分かってきた、でも、やっぱり、上野の文化会館はやりやすいね。あそこに帰ると、やりやすい。ところが、11年もたつと、最近では上野の文化会館を知らない若い楽員さんも出てきた訳ですね。というのは、もう入った時からサントリーホールで、そういう人達に聞くと、上野の文化会館がやりにくい。で、サントリーホールは、こういった聞え方がするのに、上野の文化会館にいくと全然違う、戸惑う。
で、これは、個々にはいろんな意見がありますけれど、聞いてみると面白い話で、とっても、慣れの条件が多い、という事なんですね。それで、私自身が、アマチュアのオーケストラとしてですね、上野の文化会館にのったことがあるんですが、実は、東京のオーケストラが、こぞって、演奏しやすいという訳でなくそう演奏しやすくないんです、というのは、普段練習している、練習会場というのは、もっともっと天井が低いんですね、で、それは、多分、皆さんも地元のピアノの発表会だとかですね、体験されている方も、いらっしゃると思うんですが、ああいう、お嬢さん方というのは、ほとんど、日常は6畳だとか、8畳の間だとか、低い所で、一年365日練習している訳ですね。
それが、低いとはいえども、多目的ホールで低いとは、いえども、7m、8mの天井というのは、家庭ではほとんど、経験出来ないですから、彼らたち、彼女たちにとっては、それは、ほとんど、年に一遍の慣れない所で演奏しなくてはいけない、という出来事なんですね。
ですから、私どもで、設計をお手伝いする時、もうすでに、もう一つも二つも会館をお持ちの技術の方にお伺いすると、とにかく、天井を下げてください、もう、みんな、不安がってしょうがない。天井さげると、やりやすい。あるいは、端っこによるとやりやすい。で、天井が高いとやりに