聞こえている間は全然違う訳ですね。ですから、小さい音を出しますと、ホールの中では、余韻として聞こえてくるのは、ごくごく少ないのです。でも、それも残響時間1.5秒は1.5秒なのです。2秒は2秒なんです。
まあ、そういうふうな残響時間というのと、いわゆる、余韻が聞こえるている時間というのは、ちょっと違うという事はございます。
ですから、よくホールなどに行ってですね、手をバンバンと叩いて、大体1秒位、聞こえているなと、いう事で、これは、残響時間1秒だと、言うのは、間違いで。よく、我々も、ホールに行ってですね、パンパンパンと叩いて、専門家だから、何秒位か、分かるでしょって、言われるのですが、実はよく分からないのですね。残響時間何秒かというのは。要するに、聞こえている時間と、聞こえていない時間、残響時間というのと、響きが聞こえている長さというのは、違う訳です。
で、全然分からない訳でなくて、多少は、経験があるから、分かるんです。分かるんですが、正直いってこれが、1.8秒ですか、と言われて、いや、それ位かなと、いうのが、正直なところです。
で、いずれにしても、その残響時間というものを、ちょっとだけ、面倒くさい事を、多少、ご専門の方がいらっしゃいますので、残響時間のですね、残響時間を式で表しますと、こういう式に、なります。
もう、多分、これ以降、こんな式は、出てこないと思いますので、勘弁してください。
これ、Sabineの残響式というんですけれど、残響時間Tというのは、K・V/Aと書いてありますが、ここでいう、Vというのは、部屋の容積です。それからAというのは、ここに書いてありますけれど、ちょっと面倒くさくて、御免なさい。Aは吸音力、どのくらい、室で吸音するか、という量ですね。
音響の方がご専門でない方は、今のところは、聞き流してください。何故これを、持ってきたかと言いますと、要するに、残響時間というのは、このVとAに、注目していただきたいのですが、容積が、大きくなれば、なるほど、長くなるのです。で、吸音が、室の吸音が、同じの時に、容積が大きくなればなるほど、長くなるのです。逆に、我々、分かりやすいのは、同じ室で、容積を、同じ時に、吸音が、どんどん大きくなれば、残響時間が短くなる。これは分かりやすいですね。ところが、同じ吸音、例えば、人間100人が吸音するとしますと、ここに100人の方が吸音材として入っていますと、ここの残響時間というのは、室が大きくなればなるほど、長くなるのです。
ちょっと面倒くさい事を言ったかもしれませんが、要は、残響時間というのが、部屋の大きさによって、随分変わってくる。で、実は、響きの量だけでなくて、部屋が大きくなればなるほど、同じ響きの間隔でも長くなる。何が言いたいかといいますと、これだけです。
残響時間2秒というのは、決して長い訳でも短い訳でも、1秒というのは、長い訳でも短い訳でもないんです。ただ、小さい部屋で2秒というのは長い。大きな室で2秒というのは、そんなに長くない。相対的なものだという事をご説明したかっただけです。面倒くさい事は忘れていただいてかまいません。
それから、もう一つ面白いのは、ここに書いてありますように、残響時間というのは、VとAだけで表されていますが、これは、どういう事だといいますと、残響時間は部屋の場所によらないという事が、ございます。だから、よく、我々も質問を受けるのですが、二階席の残響時間を計ってください、三階席の残響時間を計ってください、と、言われることがあるのですが、同じ室では、この、先程のVとAで、実は残響時間て、全部決まってきてしまうんですね。この中には部屋の形だとか、或いは、場所という情報は何も入って無い訳です。という事は、実は、ホール一つの中は、二階席であろうが、三階席であろうが、端っこの席であろうが、ステージのほうであろうが、一つの空間の中では、残響時間というのは、どこも同じなんです。で、そうしますと、やはり、一階席より、二階席のほうが良いとか、或いは、端っこへ寄ったほうが、良いだの悪いだのとか。これは、我々、当たり前のように、経験するものですけれど、という事は悪い席でも、良い席でも、残響時間は同じだとという事は、残響時間というのは重要ですけれど、それだけで説明出来ないという事を、申しあげたいが故に、ちょっと、色々、回りくどい事を言いました。