よく調べてみたら、結局情報の欠落、正確に情報が伝わっていなかった。また、伝わるようなシステムになっていなかった。そこで思い違いがあって、ボタンの押し間違いがあって、事故が起きた。
これが、情報がきちんと、やり取りがされていれば、絶対そのような事は起こり得ない。だから、皆さんも、今までお仕事をつづけてこられて、お分りだと思うけれど、優秀な舞台監督というのは、集められた情報を、的確に皆さん方に配給しているはずです。これが、きちんと整理されていれば、事故の起こる確率は、すごく低いと思います。それと、もっとも基本的な事を忘れた時に事故は起きています。
例えば、照明操作の方が亡くなった。これは、いわゆる、網元の所で、飛ばされて、亡くなっている。
これ、どういう事か、網元操作というのは、バランスを失ったら絶対いけないよ、それを殺す時には同じだけの力で、押さえなくてはいけませんよ。ところが、短い時間で、大勢の手が無いから、一人でやらなくてはいけないとなると、片一方で押さえておかなくては、いけない。いっぺんに、器具を外してしまえば、アンバランスになるから、一遍に持っていかれてしまいますよ。しかも、その時、ロープを手に力が入らないといけないというので、捲いているんだと、思う。捲いていたら、これは、一遍に持っていかれてしまいますよ。解ける暇はないですから。
だから、私たち教わっているのは、必ず、麻のロープを使う時は、手袋を持ちなさいよ。どうしても、本能的に滑り出したら、止めようとしたら、一瞬のうちですから、皮が剥けるのは、当たり前ですよ。でも、皮が剥けるだけで、済んでしまえば、まだいい。ちょっとでも、これ捲いていたら、パッと持っていかれて、一命を落としてしまいますよ。これ、やってはいけない、一番、基本的な事なんですよ。で、それが、たまたま、ある程度、ベテランと言われている人でも、そういう間違いをおかしてしまう一瞬があるから、恐いんです。だから基本に忠実に、という事と、舞台のうえは、少しでも、情報が的確に流れるようなシステムと、そういう事を正確にやる事。
これは、今までの事故の場合もそうだし。いったん、火災が起きた時でも、そう。すべて、その情報網が、きちっと整備されていて、普段から、そういう事に慣れていれば、どういう事態か起きても、素早く対応が出来る訳です。これは、難しい事でも、何でもない。普段から、考えておけば、ある程度、気が付くことで。舞台の上で、駆け足をしてはいけませんよ。私たちは、今まで、そんな事、教わらなくても、常識だと思っていました。ところが、今の若い人達は知らない。ましてや、恐いのは、いわゆる、ライブものだと、皆さん、お分りでしよ。舞台の事、何にも知らないのに、アルバイト雇ってきて、荷物を運ばせる。舞台を知らない。舞台を平気で駆け足する。
昔だったら、私など、そんな事をしたら、バカヤローて、怒鳴られてね。ところが、今、怒鳴る人も、いない。なんで、恐い。吊りものは降りてくるは、スライデイングステージは開くは、駆け足してたら、緊急ストップがかけられないですよ。そういう事が、平然と行なわれている。
それを、指摘しなくてはいけない。舞台を管理する側は、それを指摘するのが、一つの仕事だと、私は思うんですね。だから、昇降しているバトンの下にいてはいけませんよ。当たり前の事です。
どんな、かぜの吹き回しで、バトンどうしが接触して、器具が仮の吊りで、まだ、最終的には、ワイヤーも、通してなければ、落っこちてきますわね。ただし、その短い時間で作業をやろうすると、いちいちかまっていられ無いよ。確かにそうです。でも、そこで、バトンが降りてくるその下で作業をしている照明のポケットとろうと、あるいは、音響のマイクのコンセントをとろうなんて、していたならば、今、降りているよ、一言ちょっと注意すれば、それをよけて、作業が出来るんです。現場の責任者というのは、そういう事に気をくばること、それが的確に行なわれているか、どうか。
そういう事は、別に外の舞台監督任せ、外の大道具さん任せで、なくて、皆さん方、管理する方も、共同作業なんだから、共同作業の気持ちが無いと、こういうものは出来ない。
ましてや、今日のテーマ、自主事業という事を念頭においた時には、自分達も、ものを創る事に参加しているんだ、という意識を持ってもらわないと、自主事業なんて念仏にすぎない。
自分達でものを生み出そう。それでこそ、舞台の感激が伝わってくる。明日も、もっと良いもの