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を持っている。

つまり、劇場の性格を創る責任者でもある訳です。今年のレパートリーは、どういうものをやろうか?その選んだレパートリーによってその劇場の性格は決まってしまう訳です。ご自分が、その棒を振る時もあれば、ご自分が演出をする場合もあるかもしれないけれども、必ずしもご自分が、芸術上の責任者にならない時もあるんです。つまり、劇場の内容、プログラムを決めるのが、本来の芸術監督と言われている立場なんですね。だから、若杉さんが、ドイツのどこどこのオペラハウスの芸術監督を引き受けました。或いは、大野和士がどこどこの劇場の芸術監督になりました。これはその劇場の一年間のレパートリーを決める権限を持っていますから、今年のこの劇場はどういう方法でいこう、どういう作品を並べよう。

今年は、モーツァルトの生誕何百年祭だから、それにかけてこういう事をテーマにしていこう、或いは、現代音楽を今年のこの劇場の基準にしていこう、そういう事を決められるわけです。これには、この道の相当の深い造詣が必要だという事になる。それだから一流のアーチストを普通、お願いするのは、そういう事なんですね。これが、劇場の性格を作っていく。

かたやですね、もう一つ、日本の場合、大きな問題を抱えているのは、運営組織の二重構造、これはどういう事かというとですね、これは、公立の施設、民間の施設もそうです。民間の場合は、劇場を持っているオーナーは、劇場に関係の無い企業が多いのです。商業演劇の場合を除いて、親会社はデパートであったり、鉄道会社であったり、私が、かって所属していたグローブ座、これは大手デベロッパー、不動産会社60社が合同出資して作った、その新宿西戸山開発が親会社。その前に所属していた日生劇場、ご承知のように、日本生命が親元でございます。そういうふうにして、他の、東京も、民間の劇場といえども、やはり、親会社は劇場ホールにあまり関係が無い企業が運営している。公立の施設も、親元のホールも、県立なら県、市立なら市、こうふうにして、親元は、行政側にある、そうすると、親元から出向してホール劇場を運用していく事になる、民間の場合もそうですね、親元から大半が出向です。で、現場の事が分からないので、プロパーに任せる、そこで二重構造になる。それが、多くの問題を今まで生んでいる。

それを解決するには、どうしたらいいか? 本来、通常、どの企業もそうですが、ご自分の製品を売るには、ご自分の会社を運営していくためには、ご自分の会社の製品を熟知していなくては、企業経営者になれない。ところが劇場だけは、その二重構造が許されてきた。でも、私は、本来、向こうの劇場のように劇場のエキスパートといいますか、専門家が、それを運営するようにならなくてはいけない。だから、それには、親元がもし劇場ホールを経営するとしたならば、自分の身内の中に、そういう専門職を育てていく方向にいかなくてはいけないだろうと思います。これは、まだ時間がかかります、かかるけれど、将来は、そういう事が出来るようになれば、理想的なホール運営、劇場運営が出来るのでないかと思うのです。

 

私がたまたま、神奈川県にお勤めするようになったという事、これは県としては、物凄い、大英断だったと思います。つまり、行政側からでなくて、民間側から、いきなり横滑りに、私を登用して下さった。これはかって無かった事だった。つまり、これは、過渡的な事だと思うのですが、一時的な事だとしてもそういうやり方をやるという事は、やはり、かなり神奈川県は進歩的に発想しているんだなと感じた訳なんです。で、これを将来に亙って、お膳立てしていく事が必要だと思います。これ、急速には出来ません。

急激には出来ないけれども、それを専門な知識をもって、それを運用していくべきであろうと、私は思います。いずれは、そのパーセントは広がっていくだろうと思います。だろうと思うんです。さもないと、最終的に、決定権を持つ立場の方が現場を知らないという事は致命的になります。

出来るだけ、将来はその方向に行くのではないかと私は思っています。で、それと同時にですね、組織というのは、これはね、何が一番お金がかかるかってね、かかるといって、やはり人件費の問題が一番多い訳ですね、人件費をいかにして、節約するか。これは、民間の場合、不況の時代が続きますと、即、リストラという言葉が出てきます。つまり、そこまでないと、企業は成り立って行

 

 

 

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