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いますよ。

アマチュアの方だったら、そこまで危険性が分からない。だから、そこはプロの方に、ちゃんとやって貰いなさい。プロの人はブランコが下に降りてきたら、小母ちゃんが降りるまで、その間、直ぐ降りてはいけませんよ、こっちが、ストッパーがかけ終わるまでは、絶対降りないように、その間、五つ数えてください、それから降りてください。その間、後で安全ベルトも人がまわって外せますね。そういう、段取りをします。まあ、演出上はもっと素早くブランコを降りたら、すぐ飛び出したいでしょうが、メカニズムの上では出来ないから、そのような段取りをつけましょう。つまり、そういうふうにして、技術的裏付けを、とって、きちんと安全の確認がとれるところで、初めて、そういう効果のある事をやりなさい、という事なのです。そういう事は、皆さん、日々のなかで、いたる所で経験されていると思いますが、私は、常に、どこの館の仕事にたずさわっても、基本は、原則可能という発想でやって下さい。今まで、原則不可能の発想でやっていた所は全部変えてもらいたい。色々考えれば、大体、代替案というものは、あるんです。

現実にね、先日のメトロポリタン・オペラが来ました。柱を立てる、その時、ドイツピンを使わせてください。ドイツピンとは、スクリューになっていて、捻るやつですね。これは、径が大きいと、床に穴が開きます。しかも、これが生の木だったら、彼ら、言うことが面白いんですよ、後で水かければ、膨らむよ、木が膨らむからつぶれるよって言うんですよ。生の木を使っていれば、そうなります。

ところが今の舞台の床は、ほとんど集成材を使っている、つまり合板ですね、県民ホールもそうです。集成材を使って、これは、復元力が無いです、穴があいたら、開きっぱなし。これは、転換を素早くやる時は、ドイツピンでないと、釘を打ち込むという訳にはいかない、ドンドン音がするし。ところが聞いたら、頭飾りである、頭飾りなら充分時間がある、そしたら同じ人形のたる木の所の両脇に、下へかませて、それで釘を打てば充分に耐えられる、技術的に。そういう代替案を提出した、技術監督に。技術監督は、分かった。理由がきちんと分かれば、向こうも納得します。しかも、技術の裏付けがあれば。

頭から、ダメですよ。うちはダメです。出来ません、言ってしまったら、身も蓋もない。

ですから、私は、舞台の仕事に携わって、何が楽しいって、やっぱり、ああでも無い、こうでも無いって色々な条件をいかにクリアするか、という所で、逆に、ああ!仕事したなっていう実感を得る訳です。

その戦いが、常に、ただし、それには、自分が作る立場、つまり劇場管理だけでは無い、そこで自分が、作る立場に居られたからこそ、そういう喜びも感じられた。

だから、これから、皆さん方、自主制作をなさるという事は、少なくてもご自分たち責任に於いて公演をやるという事です。そうなると、ご自分たちの知恵の働かせどころが悪いと、いい結果は出ないという事でそこで新しい知恵との戦いですよ。それが、自主公演をやる一番のポイントだと思う.

ただ、お金だけ出していればいいんだよという事では無い、やっぱり、共同責任です。やっぱり、専門的な知識が必要なんでしょうけれども。それは、スタッフも雇わなくてはいけない、ご自分たちの力で雇わなくてはいけない。或いは、制作をある程度のカンパニーに任せてしまう。どこどこのバレエ団、どこどこのオペラ団、どこどこの劇団、おたくで、全部作ってください。すると、そっちのスタッフが乗り込んで来てやる。これは、実際の使いかってとしては、いわゆる貸し劇場方式に近いやり方になってしまう。

本来は、自分の所で制作するという事は、自主制作の責任という事からすれば、ご自分の所にもあるんですよ。だから、この運営の、自主制作の運営の責任という事、ここで、ちょっと、触れておきたいのは、よく最近も言われています芸術監督という言葉、これは、本来どういう、意味なのか?

これも、まだ日本語の場合、曖昧さが非常に多い。これは、先程も言いましたが、欧米諸国のように劇場自体が常に自主的にものを作るというシステムの中では、そのレパートリーを決める権限

 

 

 

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