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つの成功例でした。

私は、一方、神奈川の県民ホールというのは大都市型のホールですね。大都市型ですから、東京圏と同じような内容を持った、かといって横浜は横浜、神奈川は神奈川なりの地域の文化を無視する訳には、いかない。やはり、これも、掘り起こしていかなくてはいけない。そこが、逆に横浜の難しさですね。

大都市型であると同時に、地域の文化もやっていかなくてはいかない。そういう事を、どこに接点を求るか?それと同時に自主公演の難しさというのは、つまり創造性、これは、さっきもお話しした欧米諸国の劇場システムの違いの基本とも触れる事になるのですけれど。日本の場合、多くの劇場ホールが自分の所に制作集団を持っていないという事。これは根本的に違う事なんですね。

欧米の場合、少なくてもナショナルシアタークラスになりますと、自分の所にオペラ団なり、バレエ団なり、劇団なりを持ってます。小屋イコール創造集団はくっついている。ところが、日本の場合は、ここにも書きましたが、制作側と管理側の違いという事を申しあげました。つまり、劇場と作る集団とが、組織とが分かれているのですね。これが、日本と諸外国の劇場運営の一番異なる基本的要素なんです。

これは、実際に、これから制作集団を持とうとしても、これは経費的にいっても、おそらく無理だと思います。ですから日本の場合、劇場ホールに於ける運営形態の違いと言いましたけれども、劇場自体が、自主制作する事は可能です。これは、カンパニーというか制作集団を持っていなくても可能です。

お金を出して、ある程度、スタッフを集めて、あるいは出演者を集めて、やることは可能です。

と同時に多くの場合は、完全な自主制作はとらないまでも、自分のところに、制作集団を持たなくて、何処かのカンパニー、所謂、劇団なり、オペラ団なり、バレエ団なりに、委嘱する、頼む。制作を依頼する訳ですね。経費の点では、共同負担にしましょうとか、いろんな負担の仕方があります。けれども、その形態は色々。まあ、ともかく、共催しましょうという事が、ごく、一般的に行なわれています。

ただし、これも、最近になって、地域の公立の文化施設の自主公演的な事をやりたい、自分達の思っている事をやりたいという時に、身近に劇団というものを、持っていないから共催方式をとる訳ですね。

こういう形と、後は、ほとんどが、貸劇場方式ですね、劇場を貸すだけ、自分の所は制作に一切、関与しない。で、これに慣れてしまっている、これは単に劇場を、ホールを管理すればよいだけ。

ところが、一番大事な事は、劇場ホール、舞台という所は、何をやる所なのか?これが、忘れられてしまう。ただ管理するだけ、これを、やはり、ものを生み出す、舞台の芸術を作り出す、その為の場なんだ。それで良い作品を提供する事によって地域に文化を還元する、これが本来の在り方ですね。

そこの所の原点を見失いそうになる。そうすると、管理主体という事になってしまう。これは、いけないのでは、ないか? ことに自主制作をやろうとなった時、した時、まず、自分がものを生み出す。だから、今まで、私は思うのですけど、劇場管理に入ったかた達はものを作る過程を、ほとんどの方、ご存じ無い。

まあ、中にはね、昔は劇団でやってました、劇団でスタッフでやってましたという方も、いらっしゃるかもしれませんけど、ほとんどの方がいきなり劇場に入ると、管理の面しか知らない。

苦しみも、喜びも、経験が無いというケースが多いですね。これでは何処か片手落ちになるかなって思うんですが。やっばり、一方ですね、ものを作る方は、劇場ホールを知らない、知らないという事は無いんだけど、やっばり劇場ホールというのは、多くの不特定多数の方を集める訳ですから、これは、いろんな条件があります。制約があります。でも、それを使いこなしてこそ、本当の舞台人だと思う訳ですよね。

だから、先程も、お話したように、欧米諸国の場合は、劇場の中で、ものを作るという組織になっているから、劇場そのものが自分の家と同じなのです。それでこそ初めて、この劇場の特性を出す

 

 

 

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