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しまうというサイクルで動いている。基本的にシステムそのものが、欧米とは違うのですね。これを日本でやろうとすると、いろんな矛盾が出てくる。

おそらく、今後、新国立劇場、そう言ってはなんですが、運営は大変皆さん方苦労なさると思いますよ。

それをだけれども、どうしたら、日本のシステムというのは、運用出来るのか、私は、先程、たまたまお話しましたけれども、群馬県の新田町で、アドバイザーとしてやっておりますけれど、これはある意味で非常に成功した例だと思います。これは、やっぱり町立という町の規模でやつているだけに、いろんな、諸機関の決定が早い。小回りがきく訳ですね。それと、どういうふうにやったかというと、まず、去年の7月にオープンして、その一年前から準備を始めました。どういう事かというと町民によるミュージカルを創ろう。町民がミュージカルを、はたしてどれだけ出来るか?一年間ともかく、稽古時間をとって、まあアマチュアの難しい所は、プロと違って、時間が自由にとれない、正業を他にもっている、その集まりですから、なかなか思うように時間がとれない。でも、それは、やっぱり、一生懸命やると、物事は成り立つものだなって。これは東京から専門の先生にお願いして来てもらった。演出、音楽、音楽のオリジナルですね。それから振り付け、こういった先生方に東京から来ていただいた。

それで、稽古を一年間して、去年の7月オープンした訳です。その時、泣きました。二日間公演がありました。千人ちょっとの小屋ですけれど、町の人口が4万から5万という規模ですから。ただし、同じ町内の人が出るという事で、まあ、切符も売れたんでしょう。ともかく二公演とも満杯でした。舞台の結果はどうか、これが、やっばり、僕は、何十年と舞台の仕事に携わっていますけれど、プロの人たちの公演と違った意味で感動的な舞台が出来るんだ。つまり、人間が一生懸命やった結果というものは、必ず、人の心を動かす事が出来るんだ。これには、後になって考えましたが、いい勉強になりました。

まず、先生の選び方。これは、基本からきっちり指導する、そういう考え方をもったプロの方ですから、舞台へ出たアマチュアの方が、最初のうちは声も出なかった人たちが、ちゃんと声が出るようになった。

今、私たちも、普段、プロの劇団の方の公演を観ていて、あれがプロかなという正規な発声も出来ていない役者さんも、中にはいます。それから比べたら、ずっと正確に台詞がお客さんに伝わってくる。

つまり、これは、発声の基本をきっちり仕込まれたお蔭です。一年間それをやると、アマチュアといえども出来るようになる。これは、最初のうちは、時間がとれないと言いましたけど、町の人たち、下は中学生から、上は六十何歳のお年寄りまで、百人近くの人が集まった訳で、これが一生懸命、稽古をやった訳でして、踊りのシィーンもちゃんと踊れるようになる。歌って、踊れて、台詞がちゃんと言えるようになる。で、ある種の感動が舞台に生まれます。それを観た、観にきてくれたかた達が、アマチュアでもここまで出来るの。じゃあ、私にも、出来るのではないか!

今年も、やっぱり、二回目を公演しました。ただし、これは、町の方針として、最初の年は、柿落しですから、町がご祝儀予算を付けられます、町の制作によって出来ました。ただしこれも、町も最初の内は、ノウハウが、わからないから、ある大手の宣伝会社に委託しました。その代わり、大手の宣伝会社も、ノウハウを持っていますれけれど、それだけの手数料も持っていきます。結果は成功したからいいけれども、これを続けるとなると、同じような事はやっていられない。ちょうど、そこへ、私が呼ばれた時、私は、思いました、これからの地域の文化というものは、地域のかた達が自主的に動いてこそ、本当にその施設は生きた施設になるのだ。ただし、それを動かす為の人材は時間がかかる。人材育成という事は、永く続けていって、一人でも多くの技術者なり、或いは、そこで出演する人達なり、育ってくれるなら、勿論、東京から、呼ぶのも結構。だけれども、基本的には、そこの地域のかた達が、自主的にやれるものが、育ってこそ、その小屋は生きてくる、というふうに感じたのです。

ですから、僕らは、間に立ってて、どういう事をしたのか?やっぱりスタッフのかた達は、き

 

 

 

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