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えていかなくてはいけないのではないか。つまり欧米諸外国のシステムをそのまま受けいれるばかりではいけないよ。これはですね、後程、私の後のほうの項目にありますけれど、4/劇場・ホールに於ける運営形態と公演サイクルの違い/というのがございます。

これは、前にも私、お話している、あちこちでお話していますので、皆さんお聞きになっているかもしれませんが、ともかく、この舞台芸術の公演そのものが欧米諸国と大幅に違うんです。まずそこの所から冷静に分析して、ではまず日本ではどのように、どういうふうな形態にしていったらいいのか?という事を考えていかないと、いろんな問題が生じてくる。これは、一つには国民性の違いもある、社会の文化的受け入れ方の違いもある、何故かと言いますと、話がすこしとびますが、基本的に運営形態の相違点、あるいは、公演サイクルの相違点、新しい新国立劇場が出来てレパートリー方式を取り入れようというような事も最初耳にしていました。所が、それは今でも諦めているのではないと思うのですが、レパートリーシステムとは、どういう事か。これは、年間のレパートリーを予めかじめプログラムを全部組んでしまう。しかも年間新作ばかりでうめることは、決して出来ません。そうすると、過去に上演されたもので、まあ、評価の高いものをストックしておいて、そういったもの取り出してきて、それで全体のプログラムを組む。

ヨーロッパあたりのオペラハウスになっても、年間の新作ものといってもせいぜい3本か4本ですね。新しいものを作るという事は、とくにグランドオペラという事になりますと、膨大な経費が掛かりますからいくらヨーロッパの劇場経営がいろんな公的資金援助が優遇されているといいましても、やっぱり限界がある。そうなってくると、今までストックしてきたものを、とっかえ引っ代えてやって、その中に新作をまぜてやる、そういうプログラムを組む。年間でプログラムを組む場合もありますが、シーズンの中で、プログラムを組む場合もありますけれども、それを、そのまま日本でやれるかといいますとまずストックの習慣が無いですね。ですから、私は前にもお話した事があるのですが、今から20数年前ですか、モスクワ芸術座が日本に来て、公演した時私は日本側の監督をやりました。横浜の桟橋へ荷物がついたから税関立ち合ってくれ、と言われて行きました。で、倉庫の中・大道具が降ろされて、その大道具を点検して、張り物の裏を見たら日本語が書いてある、小倉、八幡、墨で書いてある。私の立ち合った公演は、モスクワ芸術座が、2回目に日本に来た時の公演だったのです。それから6、7年前にも、日本に来ているんです。その時、日本の大道具さんが、地方公演する時、道具を仕訳の都合上、道具の裏側に書いたんですね。6、7年たっても、それを持ってくるのですよね。おそらくその間、ヨーロッパ各地であるとか、アメリカであるとか、或いは、ソビエト国内を巡回公演する訳ですね。その都度その道具を使っている訳です。

そういうふうにして、ストックする習慣、これは、やっぱり石作りの文化と木と竹の文化の違いだと思っています。日本の上演のサイクルというのは、常に、そういった意味で非常に早い。

所謂、レパートリー方式以外に、ラン方式、というロングラン、アメリカなどのブロードウェイなどは、もっぱらこのラン方式、ヨーロッパでもこのラン方式を採っている。長いのになると3年4年は平気です。

そこで一つの作品にかけた元を回収するというか、一回の仕込みでそれだけやれば、元が取れます。そういう長いサイクルでとらえられない。

日本の場合、せいぜい、商業演劇でも1カ月弱の公演がほとんどです。通常のオペラとかバレエとか、演劇になりますと、まあ、長くて1週間、普通は3日ぐらいの公演がやっと、ましてや地方に来た時などは1日公演がほとんどだと思います。そのような現状からすると、長いサイクルでものを作る習慣が無い。これは木と竹と言いましたが、それは日本の気候風土があっている。つまり地震がある、噴火がある、台風がある、非常に天然の、自然の風災害に侵されやすい、そういう所での石の文化というのは育ち難い、むしろ危険です。ところがヨーロッパの場合は、石を積み重ねて、そういったものに耐えられる、そういった精神的な構造ですね、執着を持つ。それが今までのレパートリー方式とか、ラン方式とかいうものが取れるようになっている。ところが日本の場合は、土地も高い、狭い国土ですから、そういうもので、ストックしていくという事自体が、すでにもう、膨大な経費が掛かる。そうすると、一回作ったものは公演が終わったら、そのまま焼却炉に行って

 

 

 

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