「劇場演出における音響効果測定について」
松下通信工業欄 AVシステム事業部 主席技師 丸岡寿昭
【講義の概要】
1)研究目的
近年劇場における大型化・多様化の傾向はますます高まり、それに伴う情報伝達手段としての明瞭度の重要性は一段と高まってきている。そのような環境の中JATET電気音響部会では以下に着目した調査実験を行った。
?@STI値と聴感的な聞き取りやすさとの関係
?Aホールの残響時間、スピーカの指向性等の条件とSTIの関係
?BSTIの予測値と実測値との関係
2)STIの概要
STI(Speech Transmission Index)は1973年オランダのHoutgastが提案した音声明瞭度指標で、100%変調をかけた信号を室内に放射した後の変調度の低下具合を数値化したものである。
3)研究項目
?@各種STI測定器による実測値の比較
?ASTI測定器による実測値の比較
?Bホール残響時間を変化させた場合のSTI測定値と聴感評価
?Cスピーカの指向性範囲内外のSTI測定値と聴感評価
?D各種STIシュミレーションシステムとSTI予測値の比較
?ESTIシュミレーションによるSTI予測値と実測値の比較
4)研究方法
残響可変装置が設置された中野区もみじ山文化センターホールステージ上に、定指向性スピーカを設置して実験を行った。測定ポイントは8点で、反射板を設置したパターンと幕設備を設置したパターンの2パターンでの測定を行った。
測定項目は
?@残響時間周波数特性
?Aエコータイムパターン
?B伝送周波数特性
?CSTIで、測定機材は市販されているものも含め6種類を使用した。またスピーチの聞き取りやすさについての聴感評価試験も並行して実施し、5段階評価による直接評価とダミーヘッドによる一対比較評価を行っている。また4つの異なったコンピュータシュミレーションソフトによる予測と実測値の比較検討も行った。
5)平成5年度調査研究結果
?@STI測定システムの測定結果の比較
RASTIに関してはほぼ問題のないものの、STIに関しては測定値のばらつきが見られた。
?A拡声音の聞き取りやすさについての聴感評価試験について
直接評価法とダミーヘッド録音法とも評価結果が一致しており、ダミーヘッドによる間接評価法の実用が期待できる。
?BSTI測定値と聴感評価との関係
日本語を対象としたホール音響設備の明瞭度評価としても、STIは十分対応できることが