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が、そういう人たちと何回か仕事をして、それで十分いけるような気がしています。

そこでは、必要なものについて、きちっとしたネットワークを持ったテクニカルなアドバイザー、プロデューサー、専門技術を持った人が1人でもかかわっていれば、何かあったらそこにすぐ電話して質問するとか、すぐ来てもらうとか、いろいろな情報交換はできるわけだし、あとは何が必要かといったら、経験と応用する力をつければ十分やっていけると思っています。

ですから、最終的には、舞台は観客を求め、観客は感動を求めるという部分が基本的なところにあれば、それで人間の問題などは十分クリアになってくるのではないかと思っています。

とりあえず、そういうことです。

○深澤 どうもありがとうございました。

それでは、照明の方をしていただきました大野さん、よろしくお願いいたします。

○大野((財)日本照明家協会北海道支部事務局長)太田さんと同じですが、助安館長から心にしみる言葉をいただきました。ありがとうございます。

専門ばかになるなとおっしゃいました。確かに、私たちは専門ばかになりつつあります。どうしても常套手段に頼って、これでこうやれば大体何とかなるだろうみたいな明かりをつくっていることが多いので、非常に反省させられました。

照明のことだけでなくて、いろいろなことでお話をしたいのですが、特に、技術水準の確保というより前に、劇場経営のあり方について、生意気ですけれども、私の考えていることをお話ししてみたいと思うのです。

私も「ほりぞんとあ一と」という会社の経営陣の一角にいるものですから、いろいろな地方の都市から、「今度、劇場ができるのだけれども、ついては委託を引き受けてもらえないものだろうか」というお話を何件かいただいたことがあります。ほとんど、私どもの会社自体が力不足で引き受けられないので、お断りする例が常に多いのです。

中標津さんのちよっと前に、根室に総合文化会館というのができたのですが、そのときに、今はもう退職されたのですが、当時の武田さんという館長がわざわざ札幌にいらっしゃって私のところに来て、「何とか引き受けてもらえないものだろうか」というお話をいただきまして、私はそのとき二つの条件を出したのです。

まず、「職員を雇ってください。ないしは、財団運営になるのでしたら、財団で直営の技術職員を雇ってください。ただし、技術的にすぐは無理でしょうから、1年間だけ私どもでおつき合いいたします。ただし、人数は出せませんので、1人だけ出します。1カ月なり2週間交代ぐらいで、各パートに分かれると思いますが、舞台の人間が行ったら、次は照明専門の人間が行って、次は音響専門の人間が行く。オープン前の3カ月間については大変だろうから、何日かみんなで行って、みんなで一緒に作業できるようにしよう」というお話をさせていただいた。そのときに、根室で2人、直営の職員を雇っていただきました。

実は、できるだろうという自信があったのは、昔、札幌で我々と一緒の仕事をやっていた人が根室に帰ったというのを私も知っていたのです。公募があれば、きっとその人が行くだろうという見通しもあったので、そういう大胆な発言ができたのです。

その後、1年間たって私どもがいなくなるということは確約ですから、これ以上はいられませんということで、オープンしてから1年で引き揚げさせていただいたのですが、その前にお一人、今回の講座にいらしています竹田さんが市に入られまして、その後、さすがに3人ではつらいだろうということで、去年だと思うのですが、お一人ふえて、今は4人体制でやっています。直営館としては立ち上げが非常にうまくいった例かなと考えています。

私は持論として、地方都市と言ったら失礼ですけれども、地方都市の方からご相談を受けたときは、「直営でやられるのですか、財団になさるのですか」と一応伺うのです。「財団をつくって運営したいと思っています」というお話をいただきましたら「それでは直接、財団で職員を雇ってください」と言ってしまうのです。というのは、それが一番、町のためになるのです。

それではないのですけれども、うまくいっている例が中標津さんだと思うのです。

 

 

 

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