す。だけども伝承芸能ってのはその町、その村の方が何代にもわたってエネルギーをつぎこんで伝えてきたものだと、私はそのエネルギーに圧倒されました。
20時間もかかって徹夜でやるお神楽があるんです。私は村の人たちに言いました。「今若者たちがやってる音楽なんて3分間ですよ。あなたたちのように24時間ぶっ通しで大鼓をたたき、笛を鳴らし、舞い続ける文化ってのが日本のどこにありますか、世界のどこにありますか。むしろ時代からいったら皆さんがもってる方が新しい文化なんですよ。」と。
今、キューバその他に観光客が殺到しております。キューバの音楽にいたしましても、何にいたしましても、タヒチもそうです。そういうところの音楽はもともと宗教音楽でございますから、日本のお神楽と同じように長時間にわたる音楽です。それを観光立国のために一流の音楽家、一流の振付師、一流のダンサーを政府がそこにつぎ込みまして、これを観光客のために15分なり、30分のものに縮めて観光客のために紹介してるのです。もともとは、農村、山村、漁村に伝わっているようなあの長時間にわたる音楽であるということは、日本もあのお国の人々も変わりはないわけです。そのエネルギーに毎日毎日圧倒される思いで歩いておりました。
もう1つ出会ったのが過疎という問題です。子供がいないのです。
私はNHKに居ります間、単身でシベリアの奥地までバルト海から北極に近いような奥まで、それからアマゾンのジャングルの中で暮らしたり、更にアフリカの飢餓を探るためにアフリカを西から東へと横断したり、世界中で南アフリカ共和国ってとこへ行ったことありませんが、いろんな国へ行って仕事をして参りました。もしかしたら世界中のことを知っているかなと思いました。
しかし、熊本に行って全市町村歩いて、もはや子供がいないという究極の過疎におかれている状態をみたときに、私は熊本の田んぼの畦道に立って、自分は日本を知らなかったと思いました。私は10年経った今でも後悔しております。先程申しましたように、ありとあらゆる番組をつくって参りました。農業番組もやりました。NHKの教育番組が始まった最初の5年間、私は夜の7時半から8時まで農業番組をやっていた。担当してたんです。ですから、農業のことについてはある程度の知識も持ち、また多くの知り合いも持っております。しかし、過疎を扱った番組を1度も作ったことがない。しかし農村へ行きましたら、漁村へ行きましたら、山村へ行きましたら、現実にそこにおかれているのは過疎でございました。
私は米の自由化の時にもよく政府に呼ばれました。米の自由化といっていますが、もう地方には子供がいないんですよ。21世紀おそらく2,030年ぐらいになったら、稲作株式会社みたい