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ませんが、特に若い方にメッセージとして聞いていただきたいのは、ご自分が手掛けられた仕事の観客第1号は自分であるということで、自分がまず楽しまなければその事業は失敗でなくても、何か居心地の悪いものじゃないかなという気がするんです。まず、プロデューサーは自分の発案に基づく仕事が百点満点でなくても、85点でも80点でも、75点でも、とりあえず立ち上げた時、その観客の第1号は自分である、こういうふうに是非思っていただきたいと思います。

皆様これだけの方々がお集まりになっているわけですから、これだけの数のホールが四国、中国あるいは九州地方にあるわけですが、中には大ホール、中ホール、小ホールなどたくさんの設備をお持ちの巨大な文化センターのところもあると思います。よく地方にいわゆるハードだけ作ってソフトがないじゃないか、大きな図体のものばっかり建ててもしょうがないじゃないかという人がいますけれども、これは大きな間違いでございます。そういう設備が全国津々浦々に張りめぐらされているということは、日本の将来に芝居を愛する、あるいは芝居を見て幸せになる、音楽でも、オペラでもミュージカルでもバレエでもみんなそうですけども、そういう観客が今日にも生み出され、あるいは育つ。芝居というのは劇場に来るということは、こんなに楽しいものだな、という人達が生まれてこないと東京や大阪や、都市圏の商業的な劇場もいっこうに客が集まらないと思います。

というのは、例えばブロードウェイなんかでも、なにもニューヨークあるいはマンハッタン島の方々、あるいはその近くの州の方々だけが見に来てくれるわけではなくて、大変田舎から何かの商用で、あるいは何かのついでにニューヨークへ来たから、御夫婦で時間があるから人気のあるショーを見ようよと言って来られてる老夫婦というのがたくさんいらっしゃいます。中には座席を座り間違えられて、案内のおばさんに叱られているような夫婦がいるのを目撃したりして、ああ新宿コマ劇場とあんまり変わらんなあ、と思ったことがあります。

ところがそういう人達の舞台に対する態度を見ていますと、非常にすばらしい。ほんとに喜んで熱心に、熱心以上に理解して喜んでご覧になってるというのが手に取るようにわかります。私は外国行って、その地の劇場へ行くのは大好きなんです。もちろん英語がわかるわけではありませんので、ジョークを言われて周りがどっと笑っていても全然わかりませんが、非常にすぐれた観客の中で自分がその中の一人になって見るというのは大変好きなんです。そういう意味でも自分に暇があれば、自分が手掛けた芝居を観客席の片隅で見る、あるいは満席の場合は立って見る、そういう観客の反応の真っ只中で、自分が関与したものを見るというのは大好きなんですけれども、そういう意味で生まれながらの劇場の人間かなあという気がするんです。

 

 

 

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