この企画はどこどこ向きだみたいなことで、劇場を持ってる興行資本にそれぞれ企画を売り込む、というような時代が来たら「プロデューサーは個人の仕事でございますよ。」と私が言わんとしている意味がもっと強くなるんではないかと、まあそれは今年の初夢でもなんでもないんですがそんなことは起こりえないと思います。東宝には東宝のポリシーがあり、松竹は松竹のポリシーがあり、宝塚歌劇団には宝塚歌劇団のポリシーがあるということです。ドラマシティには小なりといえども、ドラマシティのポリシーがある。このような社会がすぐ生まれるわけではありませんが、プロデューサーの仕事の説明を、例え話的に申し上げれば、そういうことなんだと思うんです。
阪急電車の創設者であると同時に、宝塚歌劇団という80年を越えたレビューの集団を作りました、小林一三という人がいますけれども、彼のいろんな語録の中で、私が一番印象に残っているのは、彼がある時に新聞記者に「あなたは夢を実現する仕事をされて、大変すばらしいですね。」と、問い掛けをされ、内心この人は何にも分かっていない、僕はなにも夢を実現してるんではない、夢というのはゼロなんで、ゼロが実現できるわけがない。ゼロはいくら足しても、いくら掛けてもどこまでいってもゼロはゼロなんで、例え0.1でも何か小さな効果があるからそれが0.5になり1になり、10になり、あるいは100になって具体化するんだ、とこういうことを小林一三さんが言われているのです。
これもさっきから申し上げている演劇プロデュース、芝居やミュージカルをプロデュースするのは、個人の考えあってのたまものだということです。ですから、皆様が実際にご自分のホールなり劇場なりで、企画をお考えられまとめられる時に、いろんな企画書が手元に参りますでしょうし、いろんな提案がいろんなところから来るかと思いますが、やはりご自分がそれを1から作る、考え出して作るという気持ちを必ずお持ちいただいて、アートマネージメントという事業に、取り組んでいただきたいと思うわけでございます。
先日、演出家の蜷川幸雄さんと喋る機会がありまして、その時彼がこういうことを申されました。蜷川さんは彩の国さいたま芸術劇場というところで、シェイクスピアの全37作品ですか、全作品を蜷川演出で13年間に亘って展開しようという大プロジェクトが、さいたま芸術劇場の諸井芸術監督のもとでスタートいたしまして、その第1弾が『ロミオとジュリエット』でございます。それが1月21日に、彩の国のプレミアを経まして、名古屋公演を経てドラマシティに来るもんですから、通し稽古と初日を見に私は彩の国さいたま芸術劇場へ伺った時に、蜷川さんと話をする機会がありました。