日本財団 図書館


017-1.gif

まほろば賞

審査員特別賞

内田錦作

80歳 愛知県蒲郡市

テーマ

今、自分が社会に対して出来ること

[特別賞受賞理由]

・実践と論旨がピッタリマッチしていた。

・おはなしすきたろう先生と呼ばれているということで、実践を「あかし」づけている。

・おはなし袋が心の栄養となり、素晴らしい比喩として印象づけられた。

八十歳の私は、私の町の九つの保育園で、毎月一回ずつ『童話会』を開かせてもらっています。子供たちに聞いてもらうお話の会です。自転車をとばしてのボランティアです。私の語る童話に目を輝かせて聞いてくれる子供は一ヶ月六三〇人。季節や子供の発育を考え、日本の童話、世界の童話、ふるさとの民話などを語っています。予定された日に保育園に駆けつけると、遊んでいた子供たちはとんできて「おはなしすきたろう先生、今日はどんなおはなし。」と口々にたずねます。どこの園でも同様です。子供たちは私のことを「お話すきたろう先生とまたは略して「すきたろう先生」と呼んでいます。いつのまにかそう呼ばれるようになったのです。ときには「ももたろう先生」「きんたろう先生」などとふざける子もいます。子供たちは私の戸籍上の名前は知りません。さて、若い頃から童話に興味があつて私は公立中学校長を退職すると、あちこち童話行脚をしていましたが、十年ほど前から保育園で計画的、継続的に語り始めたのです。子供は元々童話が好きです。昔も今も全く変わりません。ところが社会は大きく変化し、核家族化、夫婦共稼ぎ、テレビ・ビデオ・様々なテレビゲームなど映像文化の普及により、子供が家庭で昔のように童話を聞かせてもらうことが極めて少なくなってしまいました。小学校や保育園でも同様です。子供はどの子も『おはなし袋』を持っています。童話を入れてもらう大事な大事な袋です。でも子供は、その「おはなし袋」に自分でおはなしを入れることはできません。おはなし袋に童話を入れてくれる人が無ければ袋はからっぽで

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION