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提言2 ボランティアに対する支援が必要である。

震災直後から夥しい数の救援物資や義援金が届けられたが,ボランティアのための支援物資が届けられたのは震災からかなりの日数が経過してからであった。ただ重要なことは,ボランティアを支援したいという人々がなかったからではないということである。実際,NVN代表がメディアのインタビューに応えてボランティアのための支援が必要であることを訴えた直後に,ボランティアへの支援物資が全国から寄せられた。例えば,長野県婦人友の会などは,今でも毎週ボランティアが必要とするものは何かを問い合わせて下さり,希望する物資を届けて下さっている。このような事実を踏まえるならば,次のように結論できよう。すなわち,ボランティアとして被災地に赴くことはできないけれども何らかの形でボランティアを支援したいという人々は多数存在する。ただ,どのボランティア団体に何を支援したらよいかという情報は欠落している。そこで防災対策の中に,ボランティアは集まるということ,及び,集まったボランティアへの支援を受け付けるということを盛り込んでおくことが望まれるのである。

また,行政や組織化したボランティアは,避難所などで活動する個々のボランティアについても支援を展開すべきである。例えば,学校長に通達をだし,避難所となった学校の給食施設の使用を認めるよう求めることは俄能であW%。レVW%,ボランティアが炊き出しをしてもいずれ物資が尽きる。そういう際に組織化したボランティアを通じて物資を支給することを促進すべきである。ここでとりわけ重要なのは次の点である。すなわち,ボランティアの撤退時期に関する支援を行うことである。今回の震災でもボランティアの撤退時期が問題になった。マスコミ報道などでは,ボランティアが早く帰ってしまいボランティアが不足しているという面が強調されていたと思われるが,事実は逆ではなかったであろうか。つまり,ボランティアが撤退すべき時期を逸してしまい避難所などに長く滞在し過ぎたために避難者の自治組織形成が遅れたという問題があったのではなかろうか。被災者のニーズを何から何まで肩代わりするのがボランティアなのではない。被災者の自立的な生活に対して「口出し」するのがボランティアなのではない。被災者が自立するのを支援するのがボランティアなのだと考える。そのためにはボランティアが被災者の前から撤退する時期を的確に判断する必要がある。無論,目の前のニーズを満たし,改善していこうということ自体は称掲されこそすれ禁じられることではなかろう。しかし,繰り返すが,ボランティアが存在することによって被災者の自立が阻害されるのであれば本末転倒である。撤退時期を判断するには被災地の現状に関する的確な,かつ,広域的な情報が必要になる。ボランティアは行政と連携しながら,全域的な情報の確保に努め,ボランティアの撤退に関しても行政に情報を提示していくことが望まれる。

 

提言3 ボランティアの側も,行政支援であることを明確に打ち出すべきである

ボランティアの側にも心得ておくべきことは多々ある。確かに,ボランティアは行政では実行が困難な事柄を実行することが多い。しかし,「行政に実行困難」であるということを「行政は怠慢である」という風にとらえ,行政と対立する姿勢でボランティア活動を展開することは決して被災地の救済を促進しないと考えている。当該地域に恒久的にサービスを提供する責任を負う行政と連携していくことが被災者の救援に結び付く。また,ボランティア活動を円滑に進めるためにもそれは必要である。ボランティアも行政支援であるという姿勢を打ち出し,その一部はボランティアの組織化を進め,行政や他のボランティア団体との調整に専従するボランティア活動を展開すべきである。

 

(2)防災に強い地域社会づくり

 

提言1 新しい防災教育を展開すべきである

地域社会の中で防災教育が必要であることは言うまでもない。従来型の教育の周知も必要であろうと思う。しかし,被災したときにどのように行動するかという点では,従来触れられていなかったこともある。例えば,ボランティア活動を展開するにあたり被災地住民のボランティアが必要だということである。つまり,全国各地から集まったボランティアには土地感がない。従って,地元のボランティアが必要となるのである。また,他の場所で災害が発生した場合には,ボランティアに出向くことも各地域で積極的に推進されてしかるべきである。また,救援物資の送り方についても周知すべき事柄がある。今回も数十万箱の救援物資が届けられたが,発送する前に地元で仕分けるという作業が必要である。

そのために発送元の郵便局などでボランティア活動をすることも被災地にとっては大きな救援になるということである。最後に,ボランティアへの参加の仕方についても周知すべき事柄があろう。例えば,発災後の混乱期にあっては,被災者,住民,被災地外のボランティア,行政職員などの区別が不可能である。ボランティアを識別するために名札をつけるという方法もあるが,ボランティアとして何かに参加する時は常日頃より青いものを身につけているといったことが日常知になるような教育が必要であると思われる。

 

提言2 情報インフラの整備を進めるべきである

 

 

 

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