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していくことが,被災者にとって最も有意義なボランティアになった。もちろんこの震災の救援活動は数日で終わるものでなく,長期にわたる活動になるのは間違いなく,そのためにボランティアの中にしっかりした組織結成の必要性がでてきた。                                         

まず,ボランティアのことはボランティアにしてもらうため,受付業務をボランティアにゆだねると,次から次に来るボランティアを受け付け,行政側から要請した仕事にテキパキと振り分けてくれるようになった。ボランティアの中にも規律が必要となり,ボランティアの間で一定のルールが自然とできあがってきた。もちろんこの時期になるとそれぞれの避難所において直接救援活動に入ったボランティアがグループ化しつつあり,中でもテレビなどで報道された中央体育館などは,一時期ボランティアであふれかえる状態となった。ただ,個々に入ったボランティアはしっかりした組織をもたないものであり,持続した形で救援活動をしていくには苦しい状況であった。

その中で,早くから市役所の地下1階で避難所への食料供給業務に当たっていたボーイスカウト達は,職員顔負けの活躍を続けており,彼らなくしては避難所への食料供給はできない状況であった。このような組織立った活躍をしているボランティアは西宮市内に幾つかあったが,それぞれ横の連絡がなく情報の不足は否めなかった。

情報の不足は集積所などでもあり,ボランティアの中でも疑問視する声があがっていた。しかし情報の不足は市役所の中でもあり,特に縦社会であるため各局の単位で動いている状態であり,担当が違うと分からないという状況が続いていた。それならば,ボランティアからこの情報をとっていこうという動きが,受付をしていたボランティアの中からあがり,時期を同じくして考えを同じようにもったボーイスカウトと話をし,情報収集など救援活動ができるところについて,互いに協力しあうという話し合いになっていた。

その中でやはり何らかの形で組織化して行動すべきであるという気運が広がり,西宮市で登録していたボランティア,ボーイスカウト,西宮YMCA,関西学院ボランティア,関西NGOネットワーク医療ボランティア,大阪府社会福祉協議会,朝日ボランティア基地,応援する市民の会などと連絡を取り協力体制をとる動きが起こり,西宮ボランティアネットワーク(NVN)ができた。このことについては西宮ボランティアネットワークの代表である伊永氏らが詳細に記述しているので,私は詳しくは述べないが,ともかく,行政と連携しながら組織だって救援活動を行うボランティアの大組織が出来上がったのである。

西宮ボランティアネットワークがそれまでのボランティアと違う最大の点は,行政との連携にある。もちろん西宮ボランティアネットワークが,西宮市の組織に組み込まれたわけではなく,それ自体はボランティアの自由さを兼ね備えながら大きな視点で救援活動ができるといった新しい形のボランティアグループであった。

もちろんボランティアネットワークと行政が100パーセントうまくいったわけではなく,立場の違い,感覚の違い,理解しがたいことも多々あったと思う。例えば同じ救援物資を取り扱うのでも,物によっては部署が違えば命令系統も違い,意思の疎通がなかなかうまく行かなくて,無駄なことが多かった。

このような無駄をなくすためには,それぞれの部署からボランティアの担当者を1名ずつ出して,横の連携を密にし,どの救援活動がボランティアにしてもらえるのかよく把握することであろう。ボランティアにとっても行政のどこで何をしているか,また,何をすればよいのかが分かりにくかったであろう。前述したとおりボランティアの特性は,組織に束縛されない機動性と自由さにあり,行政の組織と連携して部署を越えて活動することができる。行政は,ボランティアの労働力と行動力によって,本来行政のすべき全体の救援活動に専念し,なおかつ緊急必要な救援を行うことができる。

ボランティアの欠点はその不安定さにあり,被災者にとってもその行動に感謝し満足してはいるが不安である。なぜならいついなくなってしまうかわからないからであり,全面的に頼ることは無理であり,またボランティアにとっても全面的に頼られても限界がある。行政はその動きは緩慢(被災者にとっては,こう映る)であるが,継続した対応が可能である。もちろん行政本来の業務が市民の公共の福祉を目的としているからそれは当然であるが,行政は被災者だけでなく市民全体を受けとめなければならない。その点行政と連携したボランティア組織ができたことは,行政を含めた市民全体が連携していく上で,非常に意義のあることである。

 

(略)

 

NVNの活動についての評価を紹介しておく。

(1996年3月「「西宮」に関する総合研究」関西学院大学「西宮」研究会)

 

(略)

「西宮ボランティアネットワーク(NVN)」は,基本的には,従来西宮市役所を中心にして活動していたボランテア集団(個人ボランティアと主にボーイスカウト大阪府連からの派遣ボランティア)が,市から組織化を要請され

 

 

 

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