日本財団 図書館


て出発したものである。その後,西宮市で活動していたボランティア団体のうちから7つ(「西宮YMCA」,「応援する市民の会」,「朝日ボランティア基地西宮前線基地」,「関西NGOネットワーク(医療)」,「大阪府社協」,「日本ボーイスカウト大阪連盟」,それに「関西学院大学救援ボランティア委員会」)に声をかけてその調整組織としても活動しようとしたものである。つまり, NVNは,市のボランティアという性格と西宮のボランティア組織の調整機関という二つの性格とを持とうとした。

この経過からも分かるように,第1に,その設立の当初から行政による関与を伴っていたし,市役所に結集して行政活動を補完するという役割を担った。第2に,この市役所ボランティアは市外のボランティアが多く既存の地元のボランティア組織とは異なり従来からの基盤がなく,西宮市の内部においては平常復帰した際には消滅する可能性があった。第3に,「ネットワーク」という名前になっているが,諸団体の連絡組織という性格は弱く,主要には市役所に結集したボランティア集団としての機能が支配的であった。したがって,例えば,市役所に詰めた人々のグループ以外の「設立メンバー」団体は,保険料について西宮市から支援を受けたこともないし,食事や宿舎の提供を受けたこともない。若干の事業において共同した場合に調整したことはあるが,この団体の意志決定に基本的に全く参与していない。

しかし,被災した市行政の補完・協力という姿勢を明確に打ち出し,市の職員による登録制では到底対処できなかった膨大なボランティア供給に対して適切な組織化をしたことは,高く評価されるだろう。どこの被災自治体においても,何等かの形で支援物資の仕分けと配給,集まってくるボランティアの配置などは,必ずどこかが調整能力を示さざるを得なかったが,宝塚では社協のボランティア活動センター,西宮ではNVNが中心的役割を担ったのである。この急造の組織がうまく機能した原因として,市の総括文書においても,「ボランティア団体及びリーダーの資質に恵まれたこと」が最初に挙げられているが,ボーイスカウト等の組織が活動し始めておりリーダー層の形成が比較的早かったことも重要であろう。

また市内ボランティア団体のネットワーク化も,上述のように情報交流が主体であったとしても,1.市の対策本部との窓口機能を果たしたこと,2.相互に情報交流の場を提供したこと,3.ボランティアとして市全域に対して面として対処しようとしたこと,など、評価される点は大きい。

(略)

 

ボランティア団体との連携が比較的良好であった理由についての市の見解を紹介しておく。

(「1995.1.17阪神・淡路大震災─西宮の記録─」)

 

ア.ボランティア団体およびリーダーの資質に恵まれたこと。

ボーイスカウト等統制のとれた団体とそのリーダーが震災直後から活動し,早くからボランティアの主導的位置にあったことが混乱を少なくした。

市はボランティア及びリーダーをよく知る努力を惜しまなかった。

イ.市はボランティアの要望には誠意をもって,かつ柔軟に対応してきたこと

例:早くから対応窓口を開け,免許,技能の有無にかかわらず,また,市内・市外出身の別を問わず広く受入れ,できるだけ活動の場所を提供してボランティアに納得いただく努力を惜しまなかった。

食事,宿泊所,証明書,活動の拠点等の提供をし,環境整備にも意を尽くした。

ウ.連携を乱すボランティアに対して,市は話し合いには応じるが,無理な要求には応じない姿勢を貫いたこと。これにより,他のボランティア団体から信頼を得ることができ,その後のネットワークの設立につながった。

エ.復旧・復興業務の内容によってはボランティアのネットワークが対応できない場合もある(窓口業務,長期・安定供給を必要とする業務等々)。

この場合に備えて,ほかに学校,企業,団体に直接派遣を依頼することもし,多方面にパイプをつなぐようにした。これで市は,ネットワークに頼りきらないで主体的な位置を保つことができた。

オ.本市はボランティアの活動の舞台として,適当な規模であると思われること。

市とボランティア団体がコミュニケーションを図るに程よい規模であり,市内部もボランティアに対する方針の意志決定と各所管への周知を円滑に行える適正な規模でもあった。

また,大量に受け入れたボランティアの活動場所を確保できる,ある程度の組織体制も有していたこと等々によると思われる。

カ.さらに,市域の東側は大阪方面との鉄道が早くから復旧し,ボランティアが物心両面から比較的落ち着きを持ちやすかったことも寄与したものと思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION