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さらに,ボランティアでのチームリーダーを即座に決定され,そのリーダーの下で活動をしていく形を作られた。そしてその時のリーダーとして私が指名された。このことが後にNVNが結成される伏線となったのである。もし,こういうことがなく,この活動がすべて市職員の取りしきりで行われていたならば,私は持参した食料が終わった時点でこの活動をも終了させていたであろう。

このようにボランティア自身もある程度の責任をもち,行動できる環境がそろえば,大きな力となりうるであろう。そして行政担当者もボランティアに近い考えをもち,行政という壁を乗り越え,その場の状況を的確に判断し,行動できる決断力をもち合わせるようにしていただきたい。

このような資質を備えた方が私達グループの担当となられたことにより,食料供給は早い段階にベストの状態で行政のみによる救援に転換できたのだと思っている(2月下旬よりすべての食料供給を業者に委託)。このことがなければ,現在のNVNは出来上がっていなかったと思う。

NVNが2月1日に現在の形に近い形で発足するに至って,前出の方と同じように,適切な状況判断と決断力のある方が我々と行政のパイプ役を引き受けてくれたことが,より早くこの様な形でNVNを進歩させていける力となり得た。

その方からは,私自身もいろいろなことを教えていただいた。曲がりなりにも,10数年間私も一般企業に勤務し,多少ではあるが行政との接点もあり,行政とはどのようにして動くかということを分かっていたと思う。しかし,ボランティアの中心の多くは学生であり,いまだ学校という限られた環境の中にあるためにどうしても「自分が今できることを100パーセントの力を持って行動する」という考えを中心に置いて活動してしまうところがある。そのため,どうしてもこのような大きな災害で長期的な活動が必要なときにでも,短時間にしか活動できなくなってしまう。しかし,その気持ちを維持しながらも行政と連携していくことが大切なのである。それゆえ,学生がその考えをつぶさず活動していくために,社会人が行政との折衝役をすれば,長期的に活動していくことが可能になっていくと思われる。このように組織内での各自のスタンスを確認しながら活動を続け,行政各部署との連携をしてきた。

だが,非常に残念なことに,いろいろな部署の担当者の方とお会いして活動をしたが,中にはリーダーシップと決断力が乏しく「事なかれ主義」と「責任を回避すること」だけに考えをめぐらせる方がおられたことに驚きを覚えた。

確かにこれだけの大きな災害であればいたしかたないと思われるし,特に市職員自身, またはご家族が被災し現状を把握できないこともあるであろう。しかし,市職員は市民の税金により生活を維持しているのである。市民は,私企業でいえば得意先である。得意先の注文に対して,即座に「ノー」とはいえない。できるだけのことを考え,実行して当たり前であると思う。そのためにも市職員一人一人が問題を解決できる環境を行政が用意していただきたい。

もう一つ目に付いたことは,1つの目的に対し,各部署が連帯して動くのではなく,各部署が個々に考えて横との連絡もなく動いていたことに驚かされた。普通一般企業では1つの企画に対して,リーダーは1人である。各部署から集まった企画班員を掌握し,ある程度の決定を下せるだけの権限を与えられている。

例えば今回の震災に対して,義援として行政に送られた“ゆうパック”の仕分け,及び配布に対して多数の部署が関連していた。そのため仕分け方法や配布方法について異なった決定がなされたために,私達ボランティアグループはどの方向に進めばよいのか迷い,無駄な時間を使ったことがある。そのときはボランティアが各部署の連絡,決定のパイプ役として活動した。このようなことは行政内において初めに分かるはずであり,また,決定しておかなければいけないことなのではないだろうか? そして,このようなことが今回の災害において多々あったことを知っていただきたい。そのうえで,決定を下されるときは行政側の都合で判断するのではなく,被災者を中心におき,十分な量が必要とされる方々に,より早く送られることを第一に考えていただきたい。

また,こういうこともあった。

市民及び避難所に対しての物品の配布に対して,いつもボランティアが被災者に対して,説明し,不満を受けとめている現実がある。

この件に関して担当部署へ「被災者に対しての説明及び対処については,市職員の方々にお願いできないか」と申し入れたとき,その場では「分かりました」との答えが来るが,半日もすればまたもとの状態に戻ってしまう。

これらの事例から震災直後の職員の混乱の様子がうかがえる。そして,ボランティアにすべてを任せれば,行政としては責任を回避できるであろうという考えが見えてくる。被災者に対して前面に立ち,説明をし,不満を直接聞くのも行政の仕事の1つではないのか。

食料供給のときには,何かボランティアで決定できないことがあれば,じかに相談し決定できる部署または担当者がいた。だから─すべての部署または市職員がそうであるとは言えないが─非常に残念だった。

これも,私が担当部署との会議に出席したときのことであるが,あまりにも書類の書式や会議の進行方法が画一的すぎるように思われた。先に述べたように,リーダーシップを取ることのできる人を1人決定していただければ,各関係部署に対しての連絡及び調整はできる。さらに,ミーティングというものは新しいことを決定する場であるのに,

 

 

 

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