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原 寿夫

 

た53人の方が入所できずに待っているような現状です。施設に入るのに4年ぐらいかかるという状況を考えても、施設の不足が問題としてあるわけです。

また、保健・医療・福祉の連携については、日本でも言葉では随分と調子のいいことをいっていますが、すべての分野でまだ不足している状態です。たとえば、私どものような地方では、どうしても不足してしまう職種、人材があり、今後の介護保険を絡めて考えるときに、どうすればよいのかと悩んでいるような状況なのです。この連携とマンパワーの問題は、いま特に目立って欠けている部分ではないかという気がしています。

【紀伊國】 いま、決して悪気ではなくマンパワーという言葉を使われましたが、私は以前から、この言葉はある意味で差別的であるため、使ってはいけない言葉だと思っています。やはり人材というとらえ方が必要ではないでしょうか。

【原】 いまの言葉の話しと関連するのですが、最近、経済学や社会科学の方面で、人的資本という言葉がよく使われているようです。これは、経済の流れのなかで、これからの高齢社会に必要な、ある意味での人に対する投資と回収という発想に基づく言葉だと思うのですが、この言葉についても、もっと深い意味合いを考えなければならないのではないでしょうか。

つまり、80年という長い人生を思うときに、何となく生きてきて80歳になったということではなく、自分で生きる実感を覚えるような80年にしなければいけないと感じます。

そのためには、一番の基本は教育にあると思います。いわゆる学問的な教育以外の、人生や生き方を考えることを含めた教育が大切なのではないでしょうか。そして、自分で生きる人生80年のなかで、われわれ専門家はどのようにサポートできるのかを考えることが重要なのです。専門家が人々の80年の人生を引っ張っていくのではなく、専門家側が引っ張られるぐらいの世の中になり、われわれの仕事が、そのような位置づけになることを願っています。

【紀伊國】 大変素晴らしいコメントでした。

さて、会場には看護学生さんもいらっしゃいますが、どなたか本日の感想をお願いします。

【看護学生】 海外の先生方のお話しもうかがえて、とても貴重な時間を過ごすことができました。私の家には祖父母がおり、家族も多いのですが、もしその人たちが痴呆になったときは、その人にとってのよい環境をつくり、看護者としていろいろな選択肢を提供することが大切だと実感しました。

【紀伊國】 どうもありがとう。看護学生の皆さんにとっても、お役に立てたシンポジウムであったと思います。

さて、時間になりましたので、このあたりでまとめに入りたいと思います。

痴呆高齢者のケアの問題には、具体的に明確な解決策がないというのが現状です。また、高齢化率が増大することは、本来なら喜ぶべきことであるにもかかわらず、社会には、必要以上に大変なことと考える風潮があるような気がします。高齢化社会への取り組み、痴呆高齢者への取り組みは、人類にとって、1つのチャレンジであり、この解決策は必ずあるはずです。

そのためには、先ほどルンドストロョーム先生がいわれたように、まず痴呆の問題について語ることがとても大切なのです。お互いに、決して恥ずかしがることなく、会津で、福島で、そして日本全体で語り合いましょう。さらに、高齢化問題は、各国共通のテーマ

 

 

 

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