ですから、世界中の人たちと率直に語り合うことが基本になるのではないでしょうか。
また、われわれが忘れてはならないことは、痴呆の人の立場になって考えるということです。つまり、痴呆になっていない人が、痴呆の人々はこうあるべきだということをいってはいけないと思うのです。
先ほど、インフォームド・コンセントについての話題が話されましたが、高齢者ケアの基本的原則は、高齢者の自立にあると思います。この自立には、自力で生活するという意味と、高齢者自身が物事を決定するという意味があります。この基本的原則を守ることが、痴呆高齢者の尊厳を保つことにもつながるのではないでしょうか。
そういう意味では、まだ解決されていない問題について、いままでのやり方ではない、新しい方法を見つけだしていく必要があるわけです。
日本財団では、老人保健施設や特別養護老人ホームは個室を基本とするケアポートという考え方を基に施設をつくっています。しかし、これは単に部屋が個室であるという意味ばかりではありません。個室の部屋にいても、寝間着だけで過ごすのではなく、昼間は洋服に着がえて地域社会ともかかわりをもった生活をすることが重要なのです。また、このような創造的な取り組みを、われわれの側が考えだしていく責任があるのです。
この高齢者ケア国際シンポジウムでは、皆さんの率直なお話を聞くことができ、大変幸せなことと思います。海外からご出席いただいた先生方、日本の先生方それぞれに、困難な問題に大変なご努力をされていることを実感いたしました。
最後に、ご出席の先生方、このシンポジウムを支えていただいた裏方の方、コミュニケーションを可能にしてくれた同時通訳の方、そして大変熱心な聴衆の皆さんに感謝を申し上げて、シンポジウムを終了したいと思います。どうもありがとうございました。