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長谷川宗義

 

また、これからの私の取り組みとしての目標は、痴呆についての私の経験、私の考えを、多くの人に語っていくことです。

私は研究者ですので、研究のためいつも小さな部屋のなかにいて、人と語るチャンスはなかなかありません。今回、このシンポジウムでは、幸いなことに多くの皆さんと語るチャンスが与えられました。

しかし、自分自身のことを話すのは決して簡単なことではありません。特に、家族のこと、たとえば私の母の痴呆症のことなどは、話しづらいものであり、話しをすると、ぐったりとして感情的に疲れてしまうものです。このように決して楽なことではありませんが、しかし、私は、やはり語っていかなければならないことだと思っています。

私が語ったことがきっかけで、皆さんのなかに、家族の話しをしようと感じてくださった人が1人でも増えれば、自分の目的の1つは果たせたと思います。

私は、これからも痴呆について語り続けたいと思います。

【紀伊國】 パウロス先生、オーストラリアの今後の課題などお話しください。

【パウロス】 オーストラリアの大きな問題は、現在、痴呆を取り巻くサービスなどの調整が十分に図られていないことにあります。このサービスや機能をうまく調整しない限り、オーストラリアの痴呆高齢者問題は、改善していかないと思います。

1985年に政府が導入したコミュニティ・ケア・プログラムは、ヘルスケアや福祉など、さまざまな分野におけるサービスを調整し、統合したプログラムだったのですが、実際には、いまはばらばらの状態にあり、そのギャップが私たちの直面する課題となっています。

これからは、サービスを再編成し、統合性をもたせたケアプログラムに改善し、家庭および地域社会に提供していきたいと思います。また、ニューサウスウェールズ州においても、少しでもそのギャップを埋めるように努力していきたいと考えています。

【稲庭】 いまの日本は、縦割り行政のために、高齢者問題の政策においても、現場の私たちの主導ではなく、行政主導ですべてが行われていると感じます。この状況のなかで、自分の老後、自分の人生は、自分自身で考えてつくっていこうという気持ちをもつことが、これからの日本人には大切なのだと思います。

私の好きな言葉に「共感性」という言葉があるのですが、やはり共に感じる心をもつことが、高齢者問題においても重要なのではないでしょうか。

今後の私自身としては、これまで以上に痴呆の初期段階からかかわって、できるだけ予防的なことを行っていきたいと思います。

最後に、隠さないで痴呆について語るということでは、私はルンドストロョーム先生におわびしなければなりません。実は、私の父親もとてもコンディションが悪く、私はその対処に追われて、へとへとになって仕事や家事をしている状態で、いまは頭も体も疲れ切っています。

しかし、私がいま父のことを話したように、シャイな日本人の会場の皆さんも、先生方のお話を聞いて、前向きに考える姿勢が生まれたのではないでしょうか。その意味でも、先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。

【長谷川】 日本の高齢者問題の状況で、なにが欠けているかというと、まず施設の不足が挙げられると思います。先ほどバレット先生は、20か所の施設を見て回ったうえで納得のいく施設を選んだという話しをされましたが、これを日本で行ったとしたら、結局どこにも入所できなくなるのではないでしょうか。実際、私どもの施設でも、入所判定会を経

 

 

 

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