日本財団 図書館


の研究開発は、将来に向けてますますその重要性が高まっていくと思います。

現在、日本政府は長寿科学研究センターというものをつくり、非常に大きな予算をかけて高齢者痴呆の原因究明を促進しています。広い意味では、これもまた高齢者ケアという考えにつながるものではないでしょうか。

現実に、われわれ1人ひとりが痴呆になる可能性があるわけですから、痴呆高齢者のケアでなにが一番欠けているのか、解決方法はどのようなものかについて深く考えなければならないのです。

さて、本日、皆さんのお話しをお聞きして感じることは、痴呆高齢者問題は世界各国に共通した課題であるということです。

人類にとって長寿、高齢とは、本来ならば喜ぶべきものなのですが、実際は、高齢者の痴呆というと、問題を直視したくないという状況があります。いま、各国で、高齢者痴呆のケアについて、さまざまな取り組みが行われていますが、最後に、今後、このような方向で活動したいということも含めて、出席者お1人ずつのお話をお聞きしたいと思います。

まず、スウェーデンの痴呆高齢者には、これからなにをやらなければならないのかについてお話しください。また、ルンドストロョーム先生ご自身は、なにをなさりたいのかも含めてお願いいたします。

【ルンドストロョーム】 最も大切なことは、痴呆高齢者について語るということです。皆さん、もっともっとしゃべってください。話さなければ状況は変わらないのです。私は、痴呆になったときには話せないことを、いま回りの人たちにつとめて話しをしています。

痴呆になるかならないかは、本当にわからないのです。神のみが知ることで、だれにもわからないのです。ですから、話せるうちに話しておくことが大切なのです。

日本人は、家族のことを隠さないで、自分の母親、父親の状態をもっと話すべきだと思います。その意味では、このシンポジウムでは、それぞれの方がいろいろな話しをされていて素晴らしいことと感じました。

【紀伊國】 バレット先生は、本当に感動的なお話をしてくださいました。やはりわれわれ1人ひとりが、回りにいる人にもっと語るべきものだと思います。

それでは、バレット先生は、アメリカの今後の問題としてなにがあるとお考えでしょうか。個人としてなにがなさりたいかも含めてお聞かせください。

【バレット】 アメリカという国、またアメリカ人は、すべての選択肢を求めるけれども、お金は払いたくないという傾向がみられると思います。しかし、ケアに対するお金は、結局は自分たちのふところから出さなければならないのです。この傾向は、日本でも同じだと思うのですが、私たちが考えなければいけないことは、いろいろな選択肢に対するコストを負担する用意、そのための機能があるのかということです。

国によっては、たとえばスウェーデンのように、アメリカよりもはるかにうまく機能している国もありますが、これはなかなか難しい問題でもあります。アメリカの場合、問題を認識しても、その後、いわばつけ焼き刃的な解決策しかやってこなかったわけです。その場限りの解決策のため、十分なサポートもないにもかかわらず、国民が望む選択肢だけは与え続けていたのです。

また、アメリカは権利を多分に主張する国で、その権利を満たすため、どこかからか魔法のお金が降ってくるというような現実性のない認識が、アメリカ社会にはあるのです。この点をよく考えながら、これからの取り組みを進めなければいけないと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION