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ラリアでは、痴呆患者の財産管理問題については、どのような状況なのでしょうか。この問題もケアの一部と思いますので、あえてお聞きすることにしましょう。

【バレット】 アメリカにおいては、保護者、財産に関する問題は、法的な問題としてとらえられています。家族や銀行員、財務家などの人たちが設定することになっており、社会がそれを支援、支持する形になっています。

私の母親の経験では、まず、アルツハイマー協会に連絡を取りました。協会には、法的な問題を解説しているビデオがあり、私は何回もみて勉強し、この問題に関する知識を得たのです。そして、問題点について母親と話し合ったのです。

「財産問題に関して調査したら、こういった問題が出てくる」「必要なところは私がカバーするから、いま私を信用してもらわないと困る」と具体的な形で母に伝えたのです。このようにして必要なことを決定することができたわけです。

精神的に、自分が財産管理できないということを宣言させることは、つまりその時点で、本人自身が意思決定をする権利を放棄したことになるわけですから、非常に大変なことでした。私は母に「私がかわりに財産を管理できるようにしてください。そうしないと、今後問題が生じたときに困難な状況になるのです」と伝えて、母の同意を得られたのですが、これは次の段階への非常に大きなステップになりました。

【パウロス】 オーストラリアの状況もアメリカときわめて似ていると思います。

私は、患者がまだ認識力が残っている初期の段階にあり、権限委譲ができ得る状態であるならば、法律に関する文書に署名することを勧めています。

しかし、痴呆が進んでいる場合は、話が複雑になり、保護者の設定問題などが発生し、その解決のプロセスも複雑になってきます。

また、アセスメントチームの人や、患者の周囲にいる人が、患者の財産がだれかに悪用されていることに気づく場合がありますが、そのときは、オーストラリアの保護者法によって法的な解決を図っています。つまり、財務面における精神的な虐待には、保護者を設けて、その痴呆患者を守るようなシステムがあるのです。

【ルンドストロョーム】 スウェーデンでは、痴呆患者権利特別法という特別な法律があります。

この法律は、痴呆の人に対する身体的、精神的、社会的、性的な暴力から守るためのものです。恥ずべきことなのですが、スタッフがそのような犯罪を犯したという報告もあり、痴呆の人への何らかの暴力をみた場合には、すぐに通報するように指導しています。

また、スタッフは痴呆の人の権利を守り、場合によっては、家族に対する権利も守ってあげられるように、スタッフに対して教育しています。痴呆の人の権利を守ることはとても重要なことなのです。

【紀伊國】 先ほどのバレット先生の話しにあったアルツハイマー協会がつくっているビデオなどは、日本でも必要ではないかという気がしています。また、痴呆の人に関する法律についても、日本ではもっと語られるべきことだと思います。

さてこれまで、痴呆高齢者のケアについて、さまざまな問題を討論してきたのですが、やはり今後は、医療・福祉・介護などが一緒になったケアが、ますます必要になってくると思います。

たとえば、血管性による痴呆であれば、十分に治療が可能になる場合があることからも、やはり医療分野が果たす役割は大きいと思います。また、アルツハイマーについての治療

 

 

 

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