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また、家族の意識として、身体受傷、精神症状の悪化、死期を迎えたときには、病院を選ぶということが理由として挙げられます。実際、いまの日本人の意識は、最終的には病院を選ぶという方向にあると思います。ただし、なかには、病院を選んだ後、またグループホームに戻った人、あるいは老人保健施設でリハビリする人もいます。

このようなことから、私は、グループホームがすべてを処理できるとは思っていません。もしも、さまざまな知恵を絞ってそれが可能になったとしても、専門的なものをかなり投入しなければならず、経済効率が悪いものになるのです。

では、いまの日本のシステムのなかで、痴呆疾患センターや痴呆治療病棟から、グループホームはどのように利用されていくことがよいのかと考えると、まず1つは、中等度の痴呆に関して行うことが考えられます。

また、いま研究費をいただきながら試みていることなのですが、初期の痴呆のリハビリテーションに使うという意味で、グループホームは利用できると思います。

痴呆治療病棟に関しては、治療という名前がついてはいますが、どちらかというと診断能力の高いところ、治療・ケアプログラムをつくるところですので、その後、グループホームや在宅サービスに流れがあるものと考えています。

【紀伊國】 中程度の痴呆の人はグループホーム、軽症の人は在宅ケアがよいのではないかというお話しでしたが、原先生は、実際に高齢者の痴呆の方をご覧になっていて、どのようなシステムがあればよいとお考えでしょうか。

【原】 私の病院では、いま、光メディカードシステムというカードを使った情報管理についての検討を始めています。これは、療養者自身あるいはその家族の方が、あらゆる健康情報、医療、あるいは処遇に関する福祉の情報をもつということを基本におき、その情報を回りの者が利用するというシステムです。

私どもでは、年間十何名かの方を在宅で看取っており、いわゆるターミナルケアに深く関係することが多いため、横の連携は相当密にしなければいけないわけです。その横の連携のなかで、カードあるいは情報の共有化ということがテーマになっているのです。

私たちは、患者や家族とさまざまな時点で話し合いをもつことが大切だと思います。そして、どのタイミングに、どのような支援が行えるのかを考えることが一番重要なのではないでしょうか。このインフォームド・コンセントという考え方のなかで、痴呆の方も含めて、患者が亡くなるまで支援を続けることが、充実したターミナルケアへつなげられるのだと思います。

また、痴呆に関することも含めて、別なケアへ移行する分岐点の位置づけについては、あらかじめ話し合いをもつべきではないかと思います。そのようなことを踏まえて、いまカード化を検討中です。

【紀伊國】 稲庭先生は、先ほどの発表のなかで、精神障害者にも痴呆患者にも、インフォームド・コンセントが必要であるといわれました。これは、現実にはとても大変なことと思うのですが、実際に行われていて、どのように感じておられるのでしょうか。

【稲庭】 私は、大学のとき以外、ずっと精神病院のなかで暮らしているというように、特殊な環境にあるのです。つまり、精神医療で得た収入で私がこれまで育ち、いま生活していることから、やはり精神医療に対してお返しがしたいという思いがあるわけです。

幼いころから、精神障害者と一緒に暮らしてきたことが、ほかの先生よりも早くインフォームド・コンセントの考えをもつことにつながったのだと思います。私は、精神障害者

 

 

 

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