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う形になるのかどうかという問題もあるのです。

稲庭先生の「もみの木の家」などの3つの施設では、どのようなお考えでケアされているのでしょうか。

【稲庭】 私自身は、混合してもしなくても基本的にどちらでもよいと思っています。確かに小さいグループの場合は、私たちとしては、痴呆の人を集めて、なおかつ痴呆レベルを合わせたほうが対処しやすい面はあります。しかし、大規模な場合は、当然そういうわけにはいかず、混合したケアになってしまいますが、痴呆の方も痴呆でない方も、お互いに協力し合っていると思います。

【紀伊國】 おそらくグループホームは、いままでの大規模施設に対するアンチテーゼとして、8人から10人の規模で行われていると思うのですが、ルンドストロョーム先生は、痴呆の人のグループホームについてどのような意見をおもちですか。

【ルンドストロョーム】 グループホームをスウェーデンで始めた当初は、「死ぬまでここで暮らすんですよ」という状態だったのです。そのために非常に豪勢な素晴らしい施設をつくったわけです。

ところが、やがて状況が悪化してきました。たとえば、1人の高齢者が具合が悪くベッドで寝ていて、その人を2人が介護にあたり、また別の高齢者は外で歩き回っているという状況が生じたのです。

当然痴呆の人にも、個性、それぞれの欲求があるわけですから、もしも2、3か月寝ていなければならない状態であれば、一生をグループホームで過ごすという考えではなく、ナーシングホームへ移すことを考えてもよいと思います。なぜなら、介護者の目が状態の悪い人にばかり注がれて、良好な状態の人はかまわれないという危険性があるからです。

また、痴呆の人が、ほかの痴呆の人の手を取ろうとしても、気分を害したり問題が生じたりしないと思いますが、痴呆でない人は怒りだすかもしれません。そのようなことから、私は、痴呆をもつ人同士が一緒に暮らすことには問題はないと考えています。

【紀伊國】 グループホームの規模としては、10人以下とする考えが一般的ですが、もう1つの問題として、グループホームにはどの程度の痴呆レベルの方々が入ればよいのかという点があります。

稲庭先生は、いろいろな形のグループホーム、そして痴呆治療病棟も運営されておりますが、その経験を通して、グループホームが対象とする人についての考えをお聞かせください。また、グループホームを効果的に運営する秘訣みたいなものがあれば教えていただきたいと思います。

【稲庭】 スウェーデンでは、すでに1,000軒以上のグループホームがつくられており、その痴呆レベルにおける考え方としては、軽度がデイケア、デイサービス、中等度の痴呆はグループホーム、そして重度についてはナーシングホームとなっています。

私もこのスウェーデンの形がよいのではないかと思っています。実は、1つの施設のなかでさまざまな症状の人への対処ができないかと悩んだこともあったのですが、やはり断念せざるを得なかったのです。

その理由の1つとして、利用者の状況、症状によって、スタッフの対処、ノウハウが違ってくることが挙げられます。つまり、グループホームでの処遇と、たとえば死期を迎えつつある人への処遇のノウハウが全然違うために、その両方を行うのはかなり困難で、スタッフがギブアップしたことによります。

 

 

 

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