ってくると思います。在宅ケアを重視する場合、ケアを総合的に判断すること、つまりケアマネージメントが非常に大事になってくるのですが、日本の現状では、その資格制度が整備されていません。
今後は、ケアをコーディネートする人材、ケアマネージャーの育成をどのようにすればよいのでしょうか。また外国では、どのように教育しているのでしょうか。
【紀伊國】 ケアを取り巻く状況のなかで、さまざまな事柄を把握するにはだれが最も適当なのか、また、制度を整える背景としてなにが必要なのかというご質問だと思います。先ほどパウロス先生は、ACAT(高齢者ケアアセスメントチーム)について話されましたが、オーストラリアではどのような状況にあるのでしょうか。
【パウロス】 オーストラリアでは、いろいろな分野の専門職の人が、ケアをコーディネートしています。ACATでは、高齢者ケアに関心をもっているナース、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなどがチームのメンバーとして活動しています。
これらの医療従事者たちは、さまざまなところで教育を受け、経験をさらに積みたいという思いでACATに入ってくるわけです。つまり、それぞれの現場で仕事をしながら、さらに高齢者ケアに携わりたいという人たちです。
チームのメンバーが、多技能、多分野にわたっているので、ACATでは1人の患者について全人的な評価ができるわけです。たとえば理学療法士の場合、高齢者へのスクリーニングテスト、精神状態のテストを通して、認知能力を診断し、その判定をチームに伝えることになります。
このようにいろいろなレベルで経験を積んだ人たちがチームに参加していますが、現状では、人員的にまだ十分ではありません。また、メンバーとしては、基本的に経験をもった人を求めてはいますが、チームに入ってから継続的な訓練を受けて勉強している人もいます。
【紀伊國】 ケアには、医療の問題、福祉の問題があり、この2つは分けて考えるべきものではありません。医療と福祉は連携をとりながら、ケアを受ける当事者に焦点を合わせて、どのようなことが行えるのかについて考える人が必要なのです。
【パウロス】 オーストラリアでも福祉と医療の連携が不足しています。たとえば、専門家がケアを必要とする人を診断、評価し、それを受けてACATがその人に対する具体的なサービスの必要性を判断したとしても、医療面でそのサービスが提供されない場合があるのです。つまり、さまざまなサービスがあっても、それらが細分化しているために、介護者にとっても患者にとっても非常に大きな問題が生じているのです。
この問題を改善するためには、サービスの連携、コーディネートに重点がおかれなければなりません。そこでオーストラリアでは、ケア・コーディネーション・プロジェクトというプログラムを発足させました。これは、いままでばらばらだった保険、医療、医薬などの資金を1つに統合し、専門家とコーディネーターが一緒になって、さまざまな状況にある人たちのニーズに対応しようというものです。
このプロジェクトによる効果が現れるには、まだ何年もかかると思いますが、状況を改善するためには新しいシステムの導入が必要だと思います。行政や政府は、さまざまな組織と関与しているため、新しいプログラムの導入には困難を伴いますが、始めることが重要だと思います。
【紀伊國】 保健、医療、福祉、情報、システムなどの連携、コーディネーションについて、