■ 合同討議 ■
施設ケアと在宅ケアの連携
司会
紀伊國献三 東京女子医科大学教授
パネリスト
ヴァージニア W.バレット | コロンビア大学看護学部講師・コロンビア大学 |
| QOL研究所所長 |
シャスティン・ルンドストロョーム | 医療コンサルティング会社“オクトパス”代表 |
クリストファー・パウロス | イラワラ地域健康サービスセンター地域部長 |
| ニューサウスウェールズ大学医学部講師 |
稲庭千弥子 | 医療法人久幸会理事長・今村病院院長 |
長谷川宗義 | 社会福祉法人両沼厚生会特別養護老人ホーム会津寿楽荘園長 |
原 寿夫 | 原内科医院院長・福島県医師会常任理事 |
【紀伊國(司会)】 それでは合同討議に入ります。「痴呆高齢者のケア : 施設ケアと在宅ケアの連携」が本日のテーマですが、なるべく実態に即した形でのご意見をお聞きしたいと思います。会場の皆さん方も遠慮なく、ご意見、ご質問をお出しください。
バレット先生は午前中の発表で、現在、92歳のお母様が痴呆の状況にあることを話されました。プライベートなことを聞いて大変申しわけないのですが、お母様はどのようにして痴呆とわかったのですか。また、外国では高齢者の独り暮らしが多いと聞きますが、どのような在宅サービスがあり、看護婦さんであるバレット先生ご自身はどのようにお母様をケアされていたのか、ディスカッションの導入としてお聞かせいただきたいと思います。
【バレット】 喜んで私の体験をお話ししたいと思います。というのも、私の経験が、高齢者の痴呆症におけるかなり典型的、一般的な例ではないかと思えるからです。
母は、長年ソーシャルワーカーの仕事をして、のちには管理職となりました。1938年からニューヨーク市に住み、75歳で仕事をやめたのですが、そのときはまだ非常に活発な人で、カヌーを楽しんだりしていました。
母が80歳になったとき、初めて私は、もしかすると痴呆になりつつあるのかなと感じたのですが、それに気づいたのは家族のなかで私だけだったのです。
気づいたきっかけは、母の言葉使いからでした。母は非常にしつけに厳しい女性で、私は子どものころから、「シャットアップ(黙れ)」という言葉は決して使ってはいけない、「もっと静かにしてください」というように母に教えられていたのですが、その母が80歳のときに、「あいつらが黙ってくれるといいわ」と初めていったのです。それを聞いて、私は本当にショックを感じたのです。他人であれば、それが母の普通の話し方と思うかもしれませんが、母になにがあったのかと驚きを覚えたのです。
そのようなことがきっかけで、不安に思い始めた私が母の家計簿を見てみると、母は、