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る人は、年齢に関係なく、痴呆性老人とともに生活することを趣旨とした施設を運営しているのですが、やはり、軽度、重度という痴呆の程度は、ケアにとっては全然関係ないことと思います。

私たちは、家族とともにお年寄りをいかにお世話できるのかではなく、地域のなかの施設、終の住みかにしていけるような施設づくりを目指すべきなのではないかと思います。

最後に、やはり痴呆性老人を診断する専門医が必要ではないかと感じています。薬づけになっている人、薬を抜くと痴呆症状がなくなる人、そういう人を目の当たりにしている現実があるわけですが、そのあたりのお話をお聞きしたいと思います。

【紀伊國】 ありがとうございました。それではまず、初めのご質問、地域の人々への痴呆の効果的な啓蒙活動についてですが、山中先生、いかがでしょうか。

【山中】 実際私どもがやっている方法としては、主に精神科の先生に、痴呆という病気はどういうもので、ある程度早期に見つかれば、生活機能を急には低下させずに、リハビリしながら在宅でも十分暮らしていけるのだということを話していただいています。それと、気軽に保健所や市町村の窓口で相談するように、必ず皆さんに相談窓口をお教えしています。私どもの調査では、気づいてから大体5年ぐらいかかってから保健所に来るというのが25%です。ですので、「年なんだから、ぼけてもしょうがない」というのではなく、「ちょっとおかしい。何か普通じゃない」と家族が感じたら、気楽に相談に来ることを強調しています。

また、脳血管障害の予防として、青森県の場合ですと「塩分を少なくしましょう。リンゴをたくさん食べましょう」というような具体的な話しもしています。

【紀伊國】 スウェーデンではどうでしょうか。

【ルンドストロョーム】 痴呆については、世界中の人が啓蒙活動を必要としていると思います。

たとえば、警察官は、家に帰れない痴呆の人によく出会うと思います。また痴呆の人は警察官のいっていることを十分に理解できないということもあります。このようなときのための対処を考えることから、スウェーデンでは、警察や学校などでも啓蒙活動を行っています。

また、痴呆の人がうまく暮らせるような家の設計も大事なことです。これには、本当に痴呆への関心があって、痴呆の人たちのことを理解できる建築家が必要です。たとえば、明るすぎる床、暗すぎる床が隣り合わせになっていると歩きにくくなってしまいます。そこで飛ぼうとしてしまうことにもつながるのです。また、建築上あるべきではないものがそこにあると、それが原因で頭が混乱してしまうのです。建築家はそういうことをなくすために、いろいろと環境を整える役割があると思います。

そして、介護スタッフや家族には、いまの状況、将来起こりうる可能性について説明しています。また学校では、痴呆担当のスタッフになれるという教育も行っていますが、まだまだやるべきことはたくさんあります。

【バレット】 私も社会のありとあらゆるところで、教育、啓蒙をしなければならないと思います。

実は、私の母が痴呆になり、ホームヘルパーの助けを受けていたときに、非常に不思議な体験をしたことがあります。

母は、いろいろな補助器具について、「これは何なの。これはどういうものなの」と聞

 

 

 

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