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クリストファー・パウロス

 

にいるのかしら」というと、みんなの答えがそれぞれ違うのです。このように、痴呆ではない人がいないと答えが出てこない状態になり、またスタッフのほうも、バーンアウト、燃えつき症候群にかかってしまうということもあるわけです。

ですから、老人ホームのなかには、軽度と重度というように2つのレベルに分けているところがあります。しかし、痴呆がどんどん重症になりますと、2つだけでは解決せず、また別のレベルを設定することが必要になってくるわけです。ですから、これは決して簡単な問題ではなく、検討してもなかなか答えがみつからない問題だと思います。

【パウロス】 オーストラリアでは、痴呆症専門の施設というのはあまりありません。老人ホームの大半には、いわば認識障害の患者さんが一定程度はおりますが、専門ということではありません。

オーストラリアの老人ホームとしては、約70〜80床が経済的に最も効率的であるとされています。国土が広く、人口密度も低い国ですので、痴呆症専門の施設を数多く設けることはなかなかできないわけです。ですから、オーストラリアの老人ホームの場合、異なった痴呆症のレベルの人たちが同じ施設のなかに入っています。現状では、痴呆症の患者を扱う地域や場所を特定して、専門エリアを設けるぐらいしかできないのです。

私は、いろいろな症状の人がいたほうが、スタッフが燃えつき症候群にならないですむと思います。ケアにあたるスタッフ側としては、いつも同じような重症の患者ばかりですと、とかく早く燃えつきてしまうものなのです。

グループホームは、オーストラリアではまだ普及していませんが、ホステルというものはあります。また、施設によっては、たとえばホステルの隣りに自らグループホームを設けて、24時間体制のケアを提供しているところもあります。

【質問者】 これまでの話題と少し違いますが、地域に啓蒙していく場合、どのような点を中心にして考えられるべきなのか、そのポイントをお話ししていただきたいと思います。

【紀伊國】 啓蒙するうえで重要なことはなにかということですね。先生方に意見をうかがう前に、ほかの質問を先にお受けしましょう。

【質問者】 1986年に、八戸で、いまでいうグループホーム、痴呆性老人援助専門ミニホームをつくり、6人の痴呆性老人のお年寄りたちとともに生活をしてきました。そして89年に、どうしても単独では経営がうまくいかないことから、人数を23人に増やして現在に至っております。これまでの約12年の間に、250人のお年寄りの方と生活してきたことになります。

その経験から感じることは、痴呆になったお年寄りが元気なときに家族にとってどんな存在だったのかにより、家族の介護の仕方、ケアの仕方が違ってくるということです。家族を本当に大事に思ってきたお年寄りであれば、家族もまたそのお年寄りが痴呆になっても大事にするものなのです。

また、痴呆性老人の方たちが、あまりにもたらい回しの状態にあるという現状もみてきました。通常、いまの老健施設では、6か月を一応の目途として最高1年で出なければならないような状態です。こういう方たちをみていると、本当に悲しいと思います。やはり、住み慣れたところで、顔見知りのなかで生活していくことが本来の姿だと思います。そういう意味では、できれば中学校区に最低1つはグループホームをつくり、施設、在宅におけるいろいろな利用の仕方ができるようになればと思っています。

実は89年から、在宅にいる重症心身障害児や知的障害児(者)など、介護を必要とす

 

 

 

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