らば、その比率も変わるというようになっています。また、民営老人ホームで、州の規制を受けないところでは比率が変わってくるわけで、一概にはお答えできません。
【パウロス】 オーストラリアの場合では、施設、病院、老人ホームにおいての比率は、指標となる分類を基準として行われています。この分類の名前は時々変わりますが、内容としては同じコンセプトに基づいています。つまり、それぞれの患者がどの程度自立しているか、どの程度身の回りのことができるのかということを点数につけるわけです。また、認識力や行動力にも点数をつけて、その合計点数により、それぞれの患者に対して、どの程度お金を出すかが決まってくるわけです。そして、それに応じてスタッフの数も決まります。ただ、決められた人員をどのように使うかについては、個々の施設の判断に任されているので、スタッフの数もやはり施設によって異なります。
【紀伊國】 要するに、1人ひとりのケアの必要性がどれくらいあるかについて評価し、それを基準にしてスタッフの人数も決まるということですね。現在、日本ではドイツにならって介護保険の導入が考えられておりますが、介護保険の場合には、どのようにしたら人々が介護の必要性を見つけることができるのかについてチェックするということになっています。
その点では、アメリカのナーシングホームでは、MDS(ミニマムデータセット)というケアの必要性をチェックするシステムがあるのですが、バレット先生に解説していただければと思います。
【バレット】 MDSは、簡単にいえば、老人ホームなどで、ある基準によりいろいろなことを評価するものです。しかし、いくらチェックをして評価してもそれが伝わらないという批判もあるのです。たとえば、担当の看護婦がチェックしたとしても、その情報が、看護婦を助ける実際の介護者に対しては提供されないということがあるのです。MDSのそもそもの考え方としてはよかったと思いますが、はたしてどの程度有用なのかということになりますと、疑問視されているのが実情です。
【紀伊國】 この問題は、また別な機会での討論が必要かと思われますが、それでは次に、千葉先生が先ほど指摘された、家族の余裕の必要性という問題に話題を進めましょう。やはり家族が大変なときには、その家族に対するケア、レスパイトケアというものが重要になってくると思います。千葉先生、どのようにお考えでしょうか。
【千葉】 先ほどの質問者の方が、人の資源、いわゆるヒューマンパワーについての意見をいわれましたが、結局、その状態にあわせたケアが必要なのだと思います。痴呆高齢者は急に具合が悪くなるわけではなく、家族にとっても急に手に負えなくなるわけではないのです。じわじわと徐々にいろいろな問題が起こってくるわけです。ですから、それぞれの程度、段階にあわせた人的な支援、あるいはサポートの仕方があると考えています。
つまり、デイケアあるいはナイトケア、ショートステイといったようなものを複合的に組み合わせながら、その人の状況にあわせて負担の軽減を図っていくということが大切です。それが効率的でもあり、そうすることで家族へのサポートもできるのだろうと思います。
【パウロス】 患者に対しては、どのような形であれ継続的な管理を行っていくことが大事だと思います。つまり、たとえば介護するのが家族ならば、家族のなかのだれが主にフォローアップするのかということを明らかにする必要があると思うのです。
もしかすると、介護者自身がなにかの助力を必要とする事態になるかもしれないこと