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改造するなど、入所者の年齢構成にあわせて変化させてきています。

政治家は、単に、できるだけ住宅にとどまるべきだといっていますが、私はよい状態で生活できる環境にあるならば、住宅、家庭にとどまるべきだと思います。それには、デイケアやショートステイの体制を整えることが必要で、家族も休憩を取り、精神的な余裕をもつことが大切です。また、痴呆を抱えた人が、ほかの痴呆老人と会うことができ、同じような状況にある家族同士が、それぞれの経験、認識をお互いに知り合えるような交流が必要だと思います。そして、痴呆老人に対しては、失ったものより、まだ残っている能力に焦点を当てるべきだと思います。

【紀伊國】 いまのルンドストロョーム先生のお話は、まさに本日のシンポジウムの結論でありましょう。施設ケア、在宅ケア、あるいはその連携、それらのどれが最良のケアであるかを求めることが大切なことなのです。われわれがねらいとしていることは、施設ケアか在宅ケアかではなく、どういうものが痴呆高齢者の人にとって一番よいケアであるかを追い求める努力にあると思います。

さて、会場の皆さん、ほかにご質問はございませんでしょうか。

【質問者】 私は特別養護老人ホームに勤務しております。稲庭先生は先ほどから、いわゆるチームケアの必要性についてお話しされていると思うのですが、日本の場合、チームケアを行う必要があっても、ヒューマンパワーの量と質の問題が生じてくるわけです。痴呆高齢者のケアをする場合でも、マン・ツー・マンに近い形でケアをすると非常に症状が緩和するという傾向にあるのは、私たち現場の人間はよくわかっていることですが、行政による職員配置の問題があり、理想どおりにはいきません。これは福祉だけではなく、医療の現場でも同じだと思うのですが、日本の場合は、人的に全然足りない状況です。

そこで、外国の施設では、法律的に決まっているかもしれないのですが、スタッフの最適人員はどれぐらいの基準なのか、また、その数字の根拠はどういうものなのかをお聞きしたいと思います。日本では、たとえば特養ですと4対1いう数字があるのですが、この根拠が全然わからないわけです。そのあたりを含めて教えていただきたいと思います。

【紀伊國】 正確にいいますと、たとえば病院などでは「何人に1人以上」という表現があるだけで、何人以上配置してはいけないとはいっていないのです。しかし、経済的な面から、基準以上の数を配置していないという現実があるわけです。

それでは、スウェーデン、アメリカ、オーストラリアの先生の順で、人員と規制ということを含めてのコメントをお聞きしたいと思います。

【ルンドストロョーム】 それぞれの病棟の患者の状況にかかわってくる問題だと思います。国としては、それぞれの病棟がどうなのかを計算しているのかもわかりませんが、スウェーデンでは、たとえば、午前中は3人、6時になると4人、夜になると3人、また夜間になると1人か2人というように、その状況で変化しています。また、そうするほうが政治家もよく理解してくれるのです。

コミュニティの状況もさまざまで、どのぐらいの作業をこの患者についてやらなければいけないのか、どのぐらいの作業が必要かによっても、数は変化していくと思います。

【バレット】 アメリカの老人ホームに関しては、正確な数字をお答えすることはできません。患者対スタッフの人員割合は、アメリカの場合、州ごとに異なっているからです。それは、どういう患者なのかによっても異なっています。たとえば、老人ホームで主に呼吸系疾患の患者ならば、その比率は高くなり、あるいは個人的なケアが必要だということな

 

 

 

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