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【稲庭】 集団レクリエーションの内容は、音楽療法、作業療法、そして屋外リハビリなどです。具体的には、季節や天候によって内容を変えています。また、グルーピングによって、状態の悪い人がグループに入っている場合は、別なアクティビティを行うなど、その状況によっても変えており、特にこれというふうには決めていません。グループは数人から、多くても10人ぐらいまでの形です。

【紀伊國】 さて、在宅ケアと施設ケアというテーマに戻りましょう。

どこの国でも医療資源には限界があります。そうなると、複数の人を集めた施設ケアのほうが、ある意味では効率的であるかもしれません。それに対して、やはり施設ケアと在宅ケアのバランスの問題を考えたときに、こだわるようですが、在宅ケアの原点、フィロソフィーというのはいったい何なのでしょうか。パウロス先生は高齢者ケアの専門医ですが、どのようにお考えですか。

【パウロス】 本当に資源は有限です。オーストラリアでは、実際に施設ケアセクターの資源が不足しており、施設ケアへのサポート資源が十分ではありません。最近、政府が法律を改訂し、使用者が金銭的に負担するというペイシステムを導入して、部分的にではありますが施設ケアのコストを利用者が負担するようになっています。

考え方として重要なことは、在宅ケアと施設ケアの提供のバランスが必要だということです。オーストラリアの痴呆者の約半数は、コミュニティでケアを受けており、残り半数がコミュニティではない施設でケアを受けています。ですから、合理的なミックスがあるというのがオーストラリアの現状だといえましょう。

痴呆老人の場合、在宅ケアでは、その症状によって状況も変わると思います。たとえば、介護者と同居している場合には、介護者の仕事をサポートしてあげることが必要です。また、痴呆症状が初期あるいは中程度の場合は、それほど身体的な援助は必要ないわけです。ですから、オーストラリアの在宅ケアサービスでは、中程度の症状の場合、その介護者に対して、休憩、啓蒙、教育、ストレスの軽減などに重点がおかれています。

痴呆性老人が独り暮らしの場合は、サービスも柔軟でなければいけないと思います。一般的に、痴呆性老人のことをよく知っていて、薬の監督、食事の世話ができる介護人が1人は必要です。ただ、介護人がどのぐらいその家にとどまることができるのかが問題で、痴呆の進行度合いによっても限度があると思います。

オーストラリアの在宅ケアサービスは、それほど高いレベルのサポートは提供していないので、施設ケアほどお金はかかりません。施設ケアのほうがもっとかかるわけです。例外的にとても高いレベルの在宅ケアを提供しているものもありますが、ほとんどの在宅ケアでは、1週間に7〜8時間のケアを受けているだけで、それほどコストはかからないのです。痴呆の在宅ケアに関しては、個人の、患者本人のニーズに合致したものになるべきだと思います。

【紀伊國】 バレット先生は、午前中の発表のなかで、ジェリアトリックケアセンターという新しいモデルについての話をされました。アメリカのジェリアトリックケアセンターとはどういうものか、また、過去におけるインスティチューショナルケアとはどのように違うのか、そのあたりについてのコメントをいただきたいと思います。

【バレット】 ジェリアトリックケアセンターは、通常大都会にあります。たとえば、ニューヨーク州には少なくとも5か所にジェリアトリックケアセンターがあります。これらは、いわばキャンパスのようなところで、いろいろなビルが隣接しており、そのなかの住宅用

 

 

 

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