日本財団 図書館


ると思います。

【山中】 実際に、いま保健所で行っている啓蒙・普及活動はまだ不十分なところがあります。先ほどお話ししましたように、予防講習会をやっても、参加者はすでに痴呆が始まっているかもしれないような70歳以上の方たちなので、そこで予防についての話をしてもしようがないという思いもあります。そういう方たちに対しては、むしろ脳機能が低下しないような、いわゆる脳を賦活していくような、そういう遊びも交えた訓練を行うことが今後のやり方ではないでしょうか。

予防という意味では、脳血管性痴呆が非常に多いわけですから、私たちが行っている老人保健法による基本検診のなかでは、循環器検診をもっと強力にして、生活習慣改善指導などを推進していきたいと思います。特に、青森県は脳卒中、心疾患が多いことからも、そのあたりを重点的に行ったほうがよいのではないかと思います。

【ルンドストロョーム】 スウェーデンでは昨年、早期発見について、免許証に関するプロジェクトを始めました。具体的には、65歳以上の人がもし事故を起こした場合、警察官がその人に数字を書くようにいうのです。そして、いわれた数字を書けなかった人には、「かかりつけのお医者さんに行ってください」と指示するようになりました。そうすると、かなり早期に、かかりつけの医師に行く人が増え、一昨年には、900人が65歳以上で運転免許を取り上げられましたが、昨年は1,800人に増加しました。

【紀伊國】 いまいわれたような運転免許証についてのプロジェクトには、はたして妥当かどうかの議論があると思います。

それでは次に、本日の主題である「施設ケアと在宅ケアの連携」に議論を移したいと思います。

スウェーデンではエーデル革命以来、在宅ケアが大変重視されてきました。在宅ケアに重きがおかれる背景にはなにがあるのでしょうか。在宅ケアのほうが安上がりだからなのでしょうか。先ほど千葉先生は、施設ケアと在宅ケアはバランスが取れたものでなければならないといわれましたが、痴呆高齢者における在宅ケアの考え方の基礎としてなにが考えられるでしょうか。

【千葉】 現在の在宅ケアは、限られた人間が非常に大きな負担を強いられながら、一所懸命介護しているのが現状です。つまり、介護者は、肉体的にも心理的にも追いつめられて、やがて気持ちに余裕がなくなり、介護をめぐる問題が大きくなってしまうのです。

皆さんもご存じのように、介護する側が、痴呆高齢者に対して心理的な余裕がなくなると、それがそのまま鏡のように、痴呆高齢者の症状に反映し、ますます痴呆症状が重くなっていきます。また、取り扱いが非常に難しくなるという悪循環に陥るわけです。ですから、1人で負担を背負わなくてもよいように、周りに気兼ねなく気軽にシステムや情報を活用し、また、金銭的な負担も軽く、手続きももっと楽にすることが、在宅ケアにはとても大切なことと考えています。

【稲庭】 高齢になると、自分で自分の人生を選択できないといういまの社会がおかしいと思います。障害がある場合も同じように自分の人生を選択できない。私は、高齢になろうが、障害をもとうが、一生を終えて土に戻るまで、自分で人生を選択できる社会でなければならないと思います。そういう意味で、在宅ケアは1つの選択肢としてあるべきで、そのためには在宅サービスを充実させる必要があります。

金銭的な問題としては、私は施設サービスと在宅サービスはほぼ同じぐらいの経費にな

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION