は、市町村主体で行われることが望ましいと思います。その際に、保健所の役割として、管内全体の精神保健福祉活動の企画や調整、処遇困難なケースへの対応も含め、市町村による事業への指導や支援、さらには精神保健福祉センターや痴呆性疾患センターを活用しての保健婦の研修というような新たな機能を発揮し、市町村と重層的に活動していくことが重要です。
さて、今後、保健所が強化すべきものとしては、痴呆性疾患に対する住民1人ひとりの意識の啓発と、相談・情報提供の充実などが挙げられます。痴呆に対してはさまざまな偏見や誤解があり、家族が痴呆を隠してしまうケースも多く、保健所に相談に来たときには、本人も家族も共倒れ寸前ということもあります。痴呆は、高齢になれば罹患する可能性があること、恥ずべき病気ではないことを住民に教育する必要性があるのです。
また、福祉サービスの必要度と利用率にギャップがあることは、社会的サービスの質量的な問題にも起因してはいますが、家族が介護すべきだという周囲の目の存在、あるいは介護者自身の家族観・介護観から生み出されているともいわれています。このような痴呆に対する偏見や固定観念を少しでもなくし、利用者の立場に立った福祉サービスが受けられるように啓蒙していくことが大切なのです。必要な人に必要な情報を伝えられるように家庭訪問を充実し、市町村、関係機関との連携により常に情報を集め、整理、分析していくことが重要です。さらには、高齢者と常に接しているかかりつけ医などの医療関係者が早期に痴呆患者を発見し、精神科へと連携できるように、研修を充実することも大切なことです。
次に必要なことは、地域住民が精神保健福祉事業に参画しやすいように、痴呆性老人を抱える家族の会の育成、ボランティアの育成を行うことです。黒石保健所では、在宅介護療養教室の修了者から希望を募り、「パセリの会」という老人や障害者へのボランティア活動組織をつくりました。まだ会員は少ないのですが、主に保健所や市の社会福祉協議会のボランティア事業で活動していただいており、今後も会員を募っていくつもりです。
保健所は、地域の精神保健福祉活動を担う機関として、市町村、その他の関係機関や施設との連携、ネットワークづくりを充実させながら、組織をより強化して活動していきたいと思っています。
【紀伊國】 ありがとうございました。それでは、会場の皆さんに質問を考えていただく間、われわれで少し討議をしたいと思います。
先ほど山中先生は、痴呆に関して相談するには、ためらい、遠慮があるといわれました。まず自分が痴呆であることを認めたがらない状況があり、家族はどこへ相談に行けばよいのかというような問題があるわけです。
この問題について、スウェーデン、アメリカ、オーストラリアでは、どのような状況にあるのかお聞かせください。
【ルンドストロョーム】 スウェーデンでは、痴呆専門の看護婦がコミュニティに配置されている場合があります。この痴呆専門看護婦は、教会などの高齢者が行きそうなところに出向いて、「こんにちは。私は痴呆専門の看護婦ですが、相談があればいつでもいらしてくださいね」とアプローチするのです。
また、コミュニティによっては、専門看護婦が75歳以上の高齢者のいるすべての家庭を訪問する場合もあります。逆に、高齢者が自ら相談に行くこともあります。しかし一般に痴呆の人たちの多くは、自分が痴呆であるということに気づいていないので、医者のと