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1976年になって老人医学のパルプロ・ベックフリース教授が、モタラ(Motala)市で週7日24時間のプログラムを導入し、状況を改善しました。このコンセプトは、「患者の自宅にある病院のベッド」と説明できます。夜間、家庭で医療以外の援助を提供するために、夜間巡回体制が取られました。患者は当初、大半が老年医学の患者でした。今日、ほとんどの患者は救急外来の診療所から回され、その患者の約3分の1は癌の末期患者です。

1990年代前半、モタラ市のHBHCでは、住民45,000人に対し、年間延べ24,000日ベッドが埋まりました。当時スタッフは、常勤職31.5人に加え、老年医学の顧問医師1名とレジデント(専門医学実習生)1名から構成されていました。2人の医師の給与は、郡から支払われていました。

今日のHBHCのチームでは、医師、看護婦、補助看護婦が雇用されています。また作業療法士、理学療法士、秘書もいます。最後の3つの職種は日中だけ利用できます。外科、小児科、麻酔科、歯科、癌科などの専門医も必要に応じて無料で家庭訪問します。

最近、他の市がこの改良プログラムに加わりました。現在、エスターゲトランド(Ostergotland)郡西部に住む9万人の住人に、このプログラムが提供されています。両者合わせて、年間延べ42,000日もベッドが利用されています。

HBHCプログラムに新たな患者が紹介されると、医師と看護婦は、個々のニーズに応じて、共同で家庭訪問およびその患者が必要とするスタッフの種類について計画を立てます。病院のベッド、補助器具等の必要な装置についても同様に決定します。患者と最近親者に、24時間体制でスタッフが待機するオフィスの電話番号が渡されます。患者には、急性の問題に最も精通した職員が、30分以内に駆けつけて援助することがつねに保証されています。これは当然、患者にとって非常に安心できることです。

HBHCは必要に応じて、時間に関係なく予約した病院のベッドを即座に提供します。

患者の症状について話し合うために、毎週定期的にチーム・ミーティングが開かれます。これらは、スタッフがケアと論理上の問題の両方に関して高水準を維持するのに役立ちます。

チームは、患者が亡くなったあとも家族を支援します。ただし、このプログラムの患者の40%は独身です。

ベックーフリース教授は、24時間体制のHBHCを開発した後、スウェーデンのヘルスケアに苦痛緩和ケアへ資源を投入させることに成功しました。緩和ケアは、専門分野では聞き慣れた言葉になっています。教授は現在、スウェーデンでは有名な『緩和ケア』という本の編者も務めています。この本にも、私も市町村の看護婦としての自分の仕事について、1章を寄贈する栄誉を与えられました。

家庭と施設との協力のもう1つの重要な部分は、患者を寝たきりの状態から解放するためのリハビリです。

スウェーデン西部にあるハルムステッド(Halmstad)市では、作業療法士、理学療法士、老年医学医からなる、新たな「痴呆リハビリチーム」がスタートしました。彼らは臨床の境界を越えながらも、同時にプライマリーケア・システムと市町村を通じて、緊密に協力しています。多くの身体器官の機能が衰え始める80歳のお年寄りにとっては、ウイルス感染は命にかかわることです。そこで痴呆チームは、患者の状態をつぶさに調べ、患者が病院に着き次第、リハビリの計画を立てます。

国家保健福祉委員会は、リハビリを「身体的・精神的・社会的な機能性の回復、使える資源の保存および悪化への対抗」と定義しています。

 

さまざまな痴呆症の診断を受けた高齢者のケアは、20世紀最大の挑戦の1つです。その意味で私は、笹川医学医療研究財団と日本財団に対して、この会議を実現していただき感謝しています。私たちが、ケアや自分の望むことについて話ができるのは、痴呆に罹っていないいまだけなのです。そしてもしも痴呆に罹ったならば、私たち自身で決めたケアを受けることができるのです。

 

 

 

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