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■ 発  表 ■

 

アメリカにおける痴呆性老人の施設ケアと在宅ケアの連携

 

アメリカ/コロンビア大学看護学部講師、コロンビア大学QOL研究所所長

ヴァージニア・W・バレット

Dr.Virginia W.Barrett 

 

組織間の連携には、共通の目標に向かって創造的に作業をしたいという意欲が必要です。アメリカにおいては、痴呆性老人に対するサービス提供の改善が、施設とコミュニティのヘルスサービスの共通目標であり、その連携関係に大きな影響を及ぼしています。このような連携はさまざまな方法で行われており、ヘルスケアシステムの複雑さ、人口増大の影響、およびヘルスケアのニーズの変化を反映しています。連携の相互作用や利点など、連携関係について理解を深めるためには、まず、サービスの変遷とヘルスケア組織の特質を検証することが必要です。

アメリカも、世界の多くの先進諸国と同様、高齢化とそれに伴う痴呆性老人の増加の問題を抱えています。重度の痴呆性老人、中等度から軽度の痴呆性老人が、それぞれ200万人と推計されています。

疫学者が痴呆性老人の急増を予測していたにもかかわらず、アメリカ政府の政策立案者がその問題を初めて認識したのは、1950年代初めになってからです。痴呆性老人に対するサービスの需要が急増する一方で、働く女性の数が増え、その結果、これまでのように女性が老人を介護できなくなったことから、養護老人ホームの増設こそ最善の解決策であるとの結論に至ったのです。以後20年にわたり、多数の養護老人ホームが建設されましたが、サービスの需要の問題の対応に追われるばかりで、分断されていたシステムのなか、ケアの連続性が犠牲にされたのです。

不幸なことに、当時、生活の質(QOL)は最優先課題にされておらず、養護老人ホームでは、数多くの虐待が行われ、とりわけ痴呆性老人に対して、過度の投薬や身体の拘束などが行われました。1970年から1990年までの間に、長期ケア・システムの改革とサービスの連続性の改善の必要が徐々に認識されるようになり、その結果、養護老人ホームの規制強化が行われました。さらに重要なこととして、過去の教訓から、障害をもつ高齢者を在宅でケアするよりよい方法に再度注意を向ける必要を自覚したのです。適切な援助があれば、障害をもつ高齢者も自宅でより安い経費でよりよい生活の質を保ちながら面倒をみることができることが、広く一般に認められるようになったのです。

高齢者の95%が生活するコミュニティにおいて、在宅ケアサービスが拡大され、成人デイサービスが設置され、老人住宅施設がより多くの援助を提供している。施設とコミュニティサービス組織との有効な連携こそが、ヘルスケアシステムの成功の要となることが認識されるに至りました。

アメリカの長期ケアには、慢性疾患のために身辺処理能力を失い、今後とも引き続き介助が必要となる人に対する各種ヘルスサービスが含まれています。米国ヘルス

 

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アメリカにおける年齢分布割合

 

 

 

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