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油流出対策信託基金(Oil Spill Response Trust Fund)

油汚染拡大防止、回収作業、自然界の回復そして損害賠償請求の支払い費用として使われる。この基金からの資金は、油が実際海に流出した場合で、しかも原因者や連邦政府からの資金が対応に充分では無い場合や速やかな資金確保がのぞめないときにのみ充当される。基金には常時110億円が用意されている。原油と石油製品1バレルにつき最高25セント(大惨事や予期できない事由のため基金の保有額が急激かつ著しく減った場合は最高1ドル)の課税から成る。

 

環境改善基金(Environmental Enhancement Fund)

この基金の財源はレンパート・キーン・シーストランド法により生じた全ての罰金から成る。基金は海中または海岸における指定環境改善事業に使われる。事故後生じる油回収作業や現状回復作業には適用されない。

 

汚染された野生生物の救護(リハビリテーション)

海鳥、ラッコ、海洋哺乳類のための救護リハビリテーションセンターのネットワークを確立する義務はOSPRの室長にある旨がレンパート・キーン・シーストランド法には記載されている。このネットワークを確立するにあたってまず必要な施設の整備をするための資金は、この4年間で生じた油流出対策信託基金の資金の利息を運用している。1998年以降はその運営費と維持費をカバーするため年間充当金として最高130万ドルが用意されている。

 

油汚染野生生物救護ネットワーク(Oiled Wildlife Care Network, OWCN)

油汚染野生生物救護ネットワークは、レンパート・キーン・シーストランド法に従いOSPRの室長が設立したネットワークのこと。海鳥、ラッコ、その他の海洋哺乳類やウミガメの地域での救護リハビリテーションのための常設ステーションのネットワークである。常時熟練したスタッフが詰めており、いつでも活動できる状態にある。いくつかのステーションは教育を目的として一般に公開されたり、海洋生物の医学的研究に使用されたりしている。医学技術や救護方法の研究については助成金制度(選抜方式による)を設けている。

 

構成要素

 

油汚染野生生物救護ネットワークプログラムディレクター

ディレクターは野生生物獣医であること。考案とネットワークの運営を総体的に管理する責任がある。

 

ネットワーク諮問委員会(Network Advisory Board)

石油会社、野生生物の救護団体、大学教授やその他の団体の代表14名から成るが、連邦政府魚類野生生物局(U.S.Fish and Wildlife Service)と海洋水産局(National Marine Fisheries Service)も参加している。委員会は、その運営やネットワーク管理、野生生物救護の基準や研究開発の優先度、助成金授与について提言を述べる。また、OSPRの室長宛に年間予算計画を提出する。

 

科学諮問委員会(Scientific Advisory Committee)

大学、石油工場、救護団体やその他の研究団体から選ばれた科学的専門知識を有する12人が委員会を構成する。委員会は研究界からの提案を評価し、助成金授与に関してネットワーク諮問委員会に提言を述べる。

 

救護団体の構成

現在ネットワークに加入している油汚染野生生物救護団体は21ある。ネットワーク加入の選考基準は、油汚染野生生物救護に関する取り組み方や地の利が良いこと、設備が充実していること、スタッフが熟練していることなどが挙げられる。その団体の加入前の状況にもよるが、油汚染野生生物救護ネットワークの基金を施設の建築、改良、整備に充てることができる。各施設の収容能力は25羽から4,000羽 (4,000羽:油汚染野生生物救護ネットワーク基金で現在サンフランシスコに建設中の施設)とさまざまである。油汚染野生生物救護ネットワークとの取り決めの中には、油汚染野生生物救護ネットワークとの最低提携期間や管理職の養成とその証明についての条項が盛り込まれている。

 

事態への対応準備

 

トレーニング

全ての管理職は、カリフォルニア州緊急時計画を遂行し事態に備えるため年に一度開催されるトレーニングコースを受講しなければならない。こうしてトレーニングを受けた管理職の任務のひとつが施設内の他のスタッフに野生生物救護の技術や扱い方の訓練を施すことである。また、油汚染野生生物救護ネットワークでは、野外作業に耐え得る保証のある人材を最高で100人まで確保するため、野生生物の捕獲とスタビリゼイション(個体の状態を安定させること)についての訓練(24時間相当)も行っている。

 

演習

ネットワークの施設、スタッフやボランティアは、様々な緊急時計画に従ってそれぞれの地域における演習に参加する。

 

対応

施設は油流出事故発生から24時間以内に体制を整える。ネットワークの参加者は状況が許せば野生生物の捜索と捕獲の援助にあたる。

 

研究とテクノロジー開発

油汚染野生生物救護ネットワークは基本研究と応用研究を援助し奨励するための選抜方式による助成金制度を監督する。

 

【謝 辞】

本法律の調査研究に際し、その機会を与えてくださった、IUCN東アジア地域理事、副会長の堂本暁子議員に深謝いたします。

 

 

 

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