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損失、破壊、損害を被ったいかなる州および連邦政府に対して補償の義務がある。スーパーファンド法では、自然資源トラスティー受託者を大統領が任命する旨を国家緊急時計画に記載しなければならないと記している。トラスティーは、自然資源が受けた損害を査定し、補償を得、損害の回復、代替を得る、または損害を受けた資源に同等のものを得る義務がある。また、大統領がNRDAの法令を発布することも決められているが、大統領はNOAAにそれを委託している。NOAAの作成した法令と国家緊急時計画の改訂版では、作業の無駄を無くし、プライオリティを正しく決めるため、NRDAの活動と油回収作業が問題なく同時進行できるようになっている。

エクソン・バルデイーズ号事故からの経験とOPA90によってNRDAの法令は国家緊急時計画と同様、大幅に改訂されることになった。以前は、自然資源への損害とそれによって失われた自然の恩恵の貨幣価値を計算し、財源を得る(訴訟が長引くことが多い)。そしてそれから、その財源をどのように使うかを決めていたが、現在では、始めに現状回復計画を作成しその計画を実行するために必要な費用を計算してから費用にかかる金額が支払われる。だが、NOAAの監視のもと原因者自身が損害アセスメント、現状回復計画の立案、実行をするのが一番の理想とされる。政府は世論を参考にして損害回復計画の最終決断を行う。その結果、訴訟が少なくなり、アセスメント費用は低く押さえられ、アセスメントと現状回復が速やかにおこなわれるようになった。

 

油汚染における研究と技術開発プログラム

 

OPA90は、油汚染研究の新しいテクノロジーを進化させ、現存するテクノロジーを評価、テストし、油汚染が環境に与える影響を研究するための包括的なプログラムを統一させるため政府内委員会を設立した。研究課題のリストには、自然資源の回復の方法、油汚染によって環境が変わることを想定、その予測の方法や、自然資源への損害を査定する方法、脆弱地域における環境上の基本データの収集、生態学上影響を受けやすい場所を特定することなどが含まれる。油流出補償信託基金からは年間最高二千百万ドル(21億円)がこのプログラムに支払われるようになっている。また、加えて地域研究プログラム(Regional Research Program)にはそれとは別に年間6億ドルが用意されている。

 

OPA90の履行に伴うその他の変更点

 

.事故防止の強化

.より厳しい補償責任

.未払い事故への補償とタイムリーな対応に対して支払われるための基金の大幅な増大

 

油流出補償信託基金

OPA90以前には、油流出事故の油回収費用、対策費用と損害補償費用はその事故の状況によってスーパーファンド法や連邦水質管理法といった基金を含む複数の財源元から支給があった。OPA90では、国内、輸入原油共に1バレルにつき5セント徴収することで、油流出保証信託基金の補償枠を広げている。また、スーパーファンド法以外の、以前から存在する油汚染の為のすべての基金を統合した。

基金は油回収作業や自然資源の損害アセスメント、回復作業にかかる費用に支払われるため、連邦、州の責任者がすぐにアクセス可能の状態である。また、未補償の損害賠償請求やOPA90に関連する連邦管理、運用、人権費にも支払われることが可能である。認められている補償額は1事故につき最高1,000億円*、内最高500億円*は自然資源への損害に充てられる。

 

*1$100円換算

 

 

 

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