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のだと理解したからです。

しかし、簡単に処理できるような問題ではありませんでした。何と22もの行政機関が何らかの自然保護における責任があることが分かりました。それらのどの機関も、自分の義務や責任の内容を変えることなく、州関係省庁油流出対策委員会(State Interagency Oil Spill Committee)を形成しました。私がその座長を務めていますが、その委員会が流出事故が起きた時に私達が必要とする情報を交換し、そしてお互いにどう努力していけばよいかを探ります。連邦レベルでも国家対策チーム(National Response Team)という似たようなプログラムがあり、連邦レベルの様々な機関が一緒になって緊急対策を考えています。

 

植松:

この話はまだまだ続けていきたいのですが、そろそろ時間がなくなってきたようです。FOSC、国家トラスティー、それからシステムの司令官、または非常に迅速かつ強力なOPA90という法律といったものがあるから、アメリカの場合はそういう対応がとれるのですが、我々はそういう武器を今持っていません。これから持てるかという議論はとりあえず置いて次に、NRDAについて、これは海鳥あるいは海棲哺乳類も含めた話として、NGOを代表して小野さんの方から何か提案がございましたらお願いします。

 

(会場より)小野:

日本ウミスズメ類研究会の代表幹事をしております小野と申します。この研究会は1993年にウミスズメ類を中心に海鳥研究者間のネットワークを作ろうという形でできました。設立当時からハリー・カーターさん、ジョン・フリーズさんと連絡を取って、ベースライン調査がとても大事だというアドバイスをいただきまして、繁殖地の目録を作ろうということで動きました。私達の研究会は本当に貧乏な団体で、今の財政も10万円位しかないような団体なんですが、その中でどのように調査を進めていけばいいかということで、助成金で繁殖地の調査、海上分布の調査を進めるということをしてきました。一昨年でしたか、希少ウミスズメ類の繁殖と現状ということで報告書を1冊作りました。特にカンムリウミスズメを中心に目録を作ったのですが、それは本当に不十分なものでした。何故不十分かと言うと、陸の場合と違って、海の場合は調査することにものすごく労力がかかり、危険も伴い、また多額のお金もかかるということで、なかなかこちらがやりたい調査ができないという事情があったからです。

お金が無いのも1つの原因ですが、人手の問題もあります。海上の島に上がって調査するにはそれなりの技術が必要ですし、それから研究会で以前調査した時も「私は死んでも一切研究会の責任を追及しません」という念書を書いてもらったぐらいの危険を伴う調査なんです。会場にいらっしゃる樋口さんなども、もう20年、30年前からずっと調査をしてこられたのですが、命懸けの行為を伴う場合もあるような調査なのです。そういった人手不足の問題やお金の問題が、今後どのように解決されるのかということを考えております。考えられる1つの方向としては、今日お集りの皆さんの中に海上保安庁の方などがおられますが、そういった船に僕らが乗せてもらうことによってデータを提供する、またデータを受けた側はそれを有効に活用する、という手段もあるかなと思いました。

 

 

 

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