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ます。ただ、あまり話が脱線しますとフォーカスがずれてしまってあいまいになってしまいますので、私とジョンさんの間で一応の流れを考えました。最初の3分の1は主にリハビリテーションについて、次の3分の1は自然資源損害アセスメント(Natural Resource Damage Assessment,以下NRDA)について、最後の3分の1は基本的には全ての話題としますが、主にアメリカの法制度に基づくコスト、および国際油濁基金に基づく日本の対応はどうあるべきか、そしてブルソウ司令官を中心とする事故現場を担当する米国沿岸警備隊の連邦現場統轄指揮官(Federal On-Scene Coordinator)や事故対策統轄体制(Incident Command System)と言われる部分を日本はどういう形で実現していくのかという所を含めて議論させていただきたいと考えています。それぞれご質問をお持ちの方は、その流れの中で是非自発的に判断されて、手をあげていただければ幸いです。

私の方からきっかけとして、最初に梶ヶ谷先生にお聞きしたいんですが、アメリカのスコット・ニューマンさんやジョナ・マゼットさん達も我々も臨床獣医師ですよね。アメリカでは野生復帰率75%、あるいは状況によっては50%かも知れませんけれども、我々よりははるかに高い放鳥率を達成しています。その要因は我々日本の獣医師の技術的な問題なのかあるいはジョナ・マゼットさんやスコット・ニューマンさんが言われるように設備とシステムを完成すれば病理の目から見て達成可能なのでしょうか。また病理の立場から臨床医にもう少しこうしたら日本の成果は上がるんじゃないかという点についてコメントを下さい。

 

梶ヶ谷:

技術的な差というのは油の問題に関してはあまりないと思います。それは個人個人の技術のレベルという意味です。もし差があるとすれば、いやというほどスライドを見せられて歴史の差、システムの差を見せつけられたという感じがしますね。予算の面も含めて、設備面の大幅な更新と、何よりも、解剖をして思ったのですが、早い対応をすれば助かるようなケースが相当多いと思いました。そういった意味ではスピーディーな対応ができるように体制を組む必要があると思います。それによって随分と日本の状況は変わるだろうなという気がします。

 

植松:

我々獣医師は日本の場合は回収されている生きた鳥が我々の所に届くのを待っていなくちゃいけないという現実があるのですが、スコット・ニューマンさん達は私の知っている範囲では、海上に回収に行って積極的に早い時期に汚染された鳥を治療に回そうというスタンスをとってらっしゃると思います。それについてご指導いただきたいのが一点と、もう1つお聞きしたいのは、多分カリフォルニアと日本の海岸線はほぼ同じぐらいの長さですが、今のところ我々は日本に1つも油専門の施設を持っていません。もし作るとしたらどういう状況のどういう所にどの程度のものを設備した場合にとりあえずカバーできるだろうかということについて、アイデアがあれば教えていただきたいと思います。

 

スコット・ニューマン:

日本の国はわりと小さいので中央に1つの施設があれば、第一歩としては十分だと思います。しかし、そういったリハビリテーション用の施設が中央にできても、全国どこ

 

 

 

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