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油が脆弱な生息地に流されることがよくあります。野生生物に適した生息地が汚染された場合に、鳥の追い出しをすることがあります。近くに油やその他の問題がない代替地がある場合で、また従来の生息地に残れば引き続き油に汚染されることが想定される場合、鳥の追い出しをすることによって更なる被害を予防することができます。鳥の追い出しをするかどうかは、事故当時の現場の状況や野生生物の種類の特性によって決まります。鳥の追い出しにはある程度,鳥に被害を与える可能性が伴いますが、流出事故発生後の数時間〜数日間に油の漂流による野生生物への被害が不可避なものだと判断される場合には、鳥の追い出しを選択することになるでしょう。

生息地が油によってひどく汚染されている場合(引き続き影響が予想される場合)、そして特に近くにきれいな保護地区がある場合には、鳥の追い出しを必ず考慮すべきです。しかし、鳥の追い出しの範囲を絞るには汚染現場が広すぎる場合、または野生生物が追い出しによって逆に汚染地域に移動してしまいそうな場合には、鳥の追い出しは非効果的、逆効果になるかもしれません。

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これまで野生生物の追い出しに関する多くの研究が発表されています。その多くは農業被害に関するものです。こうした研究から得られる知見は、油の流出事故にも適用できるもので、最近では海洋油汚染事故対応コーポレーション(Marine Spill Response Corporation、非営利の法人)がそういったことを検討しました。ここでは既に発表された鳥の追い出しの情報にはふれませんが、マイラー(商標:金属コーテイングされたフィルム)のリボンを棒やかぎぐるまや風船に付けた様な安い視覚的な威嚇機具で、鳥が湾、河口、湿地に入ってくることを短期的ですが効果的に防ぐことができます。OSPRは最近、音波を発する2種類の市販のブイを購入し、現在その効果を評価しています。そのブイは、流出が起きた海域の真ん中に設置され、鳥が危険を感じた時や、困った時、警告、捕食者が近くにいると感じた時などに発する鳴き声を発します。今までその様な聴覚的な威嚇装置は、浅い海岸沿いの海に潜水型のカモ類を近づけないといった効果を上げています。しかし、この様な装置は比較的高価ですし、また外洋性の鳥種の接近を防ぐ効果は実証されていません。さらに、OSPRはプロパンの大砲や火薬を使った発射体といった、小規模な沿岸湿地や干潟に適した様々な装置を持っています。

一般的に言えば、流出事故の対応は数ヵ月かかる様なものはなく、数日間で終わるものなので、鳥が追い出しに慣れてしまう恐れは少ないと言えるでしょう。幾つもの視覚的、聴覚的な威嚇機具を順番に使うことは効果的ですので、それを必要とする状況であれば、すぐに使い始めた方が良いでしよう。

 

野生生物保護活動の責任者の大きな心配事は、油流出事故の対応全体による野生生物への影響です。特に春や夏に島や海岸で油除去活動をする場合は、そうした人達に営巣している鳥の存在を知らせる必要があります。鳥の個体群や塩性湿地は人間活動による妨害には特に

 

 

 

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