います。例えば環境脆弱指数(地形学)、自然資源、文化資源、石油開発の設備およびパイプライン、事故対応設備、経済資源などのデータです。GISのデータ層は地図や電子データファイルの形で維持されます。事故の初期段階でOSPRは、地区緊急時計画を作成するためにこれらの地図やデータファイルを利用します。GIS一式(地図情報、ソフト、ハード)は、事故現場へ移動できるようになっています。そこで油除去作業や野生生物保護の戦略を立てる時にも、またそれを実施する時にもGISは役立ちます。特に重要だとされる野生生物の生息地とそれを守るための方法がGISによって特定されます。例えば塩性湿地は多くの魚や野生生物を維持しており、さらに河口の生態系における一次生産者として機能していますが、こういった重要な塩性湿地も、GIS上で示され、さらにそれを保護するためのオイルフェンスの設置場所の案も示されます。
ベースラインデータは、脆弱な野生生物資源に対するリスクレベルのシュミレーションのために使われます。例えば沖合いの油の流出を想定した幾つかのモデルを利用して、ラッコの致死的な被害を推定したことがあります。この様な研究の結果は、計画策定や野生生物故護設備および事故対応設備の配置を考える際に役立ちます。
野生生物保護活動の2つ目の段階はリアルタイムのデータ収集です。ベースラインデータはとても重要ですが、海鳥は毎日または季節ごとに移動していますので、ベースラインデータでは実際の状況を表わしきれません。従って流出があった時に野生生物の実際の状況を迅速に把握する必要があります。このリアルタイムデータは流出規模や関係してくる生息地に合わせて、航空機、船舶または陸上での調査によって収集されます。それぞれの調査の種類には決まった手法があります。これは標準化されたものなので、どこでも同じ方法で調査ができ、さらに地理的条件も反映させたものです。例えば航空機による調査の場合は、OSPRの航空対応チーム(Aereal Wildlife Response Team)によって、航空機が離陸した数時間後には、数平方kmの海域にいる海鳥や海棲哺乳類の種類、分布、数量を特定することができます。ラップトップパソコンに接続されている全地球測位システム(GPS)を用いて航空機からの観察の結果が記録され、無線でGISの専門家にそれが転送されます。そしてその専門家は、数分内にその海の脆弱度をメッシュ化された地図に作成することができます。この地図は合同事故対策統轄本部に提供され、対応の戦略を選択する時に使われます。例えば油の予測漂流経路上に特に脆弱な野生生物が存在する場合は、油分散剤を使用するかどうかの判断基準になります。また、オイルフェンスの配置、鳥の追い出しといった行動が推奨されるかもしれません。さらに調査結果を用いて、野生生物が海岸に漂着する場所に野生生物捕獲チームを派遣することもできます。そして以前の方法ではわからなかった、または証明できなかった海上の野生生物に対する油流出の影響を流出事故の後、このデータを用いてモデル化し、より正確に推定することができます。
上記の様に野生生物に対する悪影響を予防することは野生生物保護活動の2番目の優先事項です。これは従来の流出事故対応活動を、野生生物を保護するために修正することで実現できます。分散剤、油回収装置、オイルフェンスといったものを利用する際には、流出対応現場にいる野生生物やその生息地の脆弱さが考慮されるべきです。
迅速な対応ができた場合でも油がいったん浅い沿岸地帯に入ると、風や潮流によってその