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講演

カリフォルニアにおける油汚染事故時の野生生物被害最少化技術

カリフォルニア州魚類鳥獣保護局油流出防止対策室生物専門官

ポール・ケリー

 

カリフォルニアは世界で最も生物多様性に富んだ地城の1つです。41万4,400?qもの広さを持つカリフォルニアには、他の州よりも多くの独特の動植物が生息しています。この多様性を反映して、カリフォルニアの沿岸地域には6種類の鰭脚類、カリフォルニアラッコが生息し、また16種の海鳥がカリフォルニアで繁殖し、その他にも非常に多くの海岸に生息する鳥や河口に生息する鳥が繁殖しています。この様にカリフォルニアの海岸は海洋性野生生物が豊富なだけに、油流出事故が起きた場合の被害は他の地域よりも大きくなります。1960年代には、幾つかの大規模な油流出事故が発生し、カリフォルニアの市民は自然のこうした脆弱さに気付き始めました。さらに州の経済の中で大きな役割を果たしている観光業や他のレジャー産業を支えるこうした野生生物資源を保護するよう訴える様になりました。

 

カリフォルニアで油流出事故が発生すると、野生生物資源を保護したり救護したりする活動が行われますが、これは野生生物保護活動(Wildlife Operations,WO)と呼ばれています。野生生物保護活動は、カリフォルニア州魚類鳥獣保護局油流出防止対策室(California Department of Fish and Game,Office Of 0il Spill Prevention and Response,以下OSPR)によって開始され、また指揮されます。その活動を支えるのが自然資源トラスティー(Natural Resource trustee,以下トラスティー)、OSPRが事業を委託している組織、ボランティア団体、および事故原因者です。

この活動は、合同事故対策統轄本部(Unified Command)の承認を受ける毎日の事故処理計画に盛り込まれます。野生生物保護活動は数人で行われる場合もあれば、最近のカリフォルニアで起きた流出事故の様に150人で行われることもあります。通常、野生生物保護活動に関わるのは、OSPRに所属する生物学者、獣医師、動物看護士や訓練を受けたボランティアなどです。流出の規模、場所、影響を受けている動物の種類によって、野生生物保護活動専用の設備が用いられます。

 

野生生物保護活動における第一の優先事項は、被害を受けそうな野生生物の特定です。次の2段階に分けて特定の作業が行われます。第1段階は体系的なベースラインデータの収集によって野生生物やその重要な生息地を特定することです。カリフォルニアでは、ベースラインデータは毎年次の様な方法で収集されます。航空機による重要な海鳥個体群の調査、定期的な徹底した海鳥繁殖調査、定住または渡り性の海鳥や海棲哺乳類の海上調査、年に2回のラッコの調査、毎年の鰭脚類の集団繁殖地の調査、その他の定量的調査などです。この様なベースラインデータの収集や個体群のモニタリングといった活動の調整と資金獲得は、管理機関にとって頭の痛い問題です。このベースラインデータは、コンピューターの地理情報システム(Geographic Information System,以下GIS)上に蓄積されます。こうしたことで、OSPRは事故が起こる前に、カリフォルニアのそれぞれの沿岸地域の汚染に対する脆弱度(sensitivity)を評価することができます。OSPRではCIS上で何種類ものデータ層を維持して

 

 

 

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