よく計画された事故対応システムは、油流出事故が発生する前に野生生物の救護団体や事故対応組織と良好な関係を作り上げることで、こういった団体の専門技能を活用することができるでしょう。また効果的な対応システムを作り上げる鍵となるのは、こうした団体のために毎年実施される訓練プログラムです。この訓練では、油に汚染された野生生物の最新の救護技術についての説明や、油に汚染される危険がある種を飼育した場合の健康管理上の問題の説明のみならず、有害物質の安全な取扱方法についても説明されます。またこの訓練プログラムには、スムーズな事故対応を行うために、事故対応の際に誰がどんな役割を担い、どのような経路で指示が伝達されるかといった内容も含まれるべきでしょう。事前に各組織の役割分担が決まっていれば、事故対応をスムーズに行うことができます。
油流出事故に即座に対応できる訓練された人材を提供したり、リハビリテーションのための施設を提供すると共に、油汚染野生生物救護ネットワークは油流出事故に対応する関係機関の間のコミュニケーションを維持しなければなりません。こうしたコミュニケーションによって、開発された新しい技術がすぐに治療のマニュアルに盛り込まれ、油に汚染された野生生物に最高の治療を施すことができるのです。
背 景
このシンポジウムを開催するに至った背景と似ていますが、カリフォルニアは統合された油流出事故対応のシステムを作ることで過去の油流出事故に対処し、また将来起こりうる米国西海岸での油流出事故に備えています。このシステムは連邦、州、地方自治体、事故発生時に特定される油を流出させた事故原因者、油流出事故対応に精通した事前に認知されたNGOによる共同作業によって成り立っています。このシステムの狙いは、自然環境の中で油製品にさらされた野生生物に最高の治療を施すことにあります。そのために恒久的な野生生物のリハビリテーシヨン施設を用意し、油流出事故に対応できる人材の育成をしています。私達の全ての施設はいつでも利用できるように維持管理されており、野生生物を救護できる人が24時間、365日体制で待機しています。「油汚染野生生物救護ネットワーク」が活動を開始した際には、必要であれば12時間以内に野生生物対応要員を流出現場に派遣できます。油に汚染された野生生物のためのこの組織化されたシステムは、全ての関係団体と4つの法律による詳細な計画から生れています。その結果として誕生した油汚染野生生物救護ネットワークは、OSPRによって後援され、また石油産業からの資金で構成される油流出対策信託基金から得られる利子から資金を得ています。
組織構成
油汚染野生生物救護ネットワークを全ての関係団体の要求に答えるシステムにするためには、主な参加団体とシステムの利用者に、このシステムを作る作業に参加してもらうことが不可欠でした。カリフォルニアのシステムの場合、政府の野生生物トラスティー派遣機関、大学や研究機関、石油会社、石油運送業、石油海運業、そして野生生物リハビリテーシヨン団体などの代表者に参加してもらいました。こうしたシステムに組み込まれうるその他の団体としては、環境保護機関、地元の野生生物の特定やその生態に精通した野生生物関係の